06
「今月のPyxis見たか?」
「見た見た!怜音だろ?綺麗だよな〜」
有名なファッション雑誌『Pyxis』に載る、スレンダーで可愛いより綺麗なイメージが強い人気トップモデルの怜音(れのん)
「皆して何見てんの?」
星詠み科男子が1つの机を囲んで食い入る様に見ているのが余程気になったのか、滅多に男子の輪に入らない咏羽が話しかけてきた。
「神苑も見るか?」
「……あー、モデルの怜音、だっけ?」
「そうそう。こんなに括れてる人なんて居んのか?」
「努力すれば括れなんて誰にでもできるよ」
簡単に言ってのけてしまう彼女に、男子達は目を丸くする。中学の時の女子はやたら体型を気にするし、彼らも少なくとも努力している人を見た事がある筈だ。しかし『努力』という単語が咏羽から聞けるなんて誰も予想してなかったのだろう。
「そんなに驚く事ないじゃん。人並みの努力くらい、僕だってするよ」
「いや、悪い悪い。余りにも衝撃だったモンで」
「まぁ、いいや。それよりあと1分で授業だけど、次移動教室じゃなかった?」
「…忘れてたっ!!」
咏羽の言葉でクラス全員が慌てて教室を出て行く。1人ぽんつんと佇む咏羽は、机の上に置きっぱなしの雑誌を手に取ってまじまじと怜音を見る。
「これが『私』だって言ったら、皆は驚くよね」
咏羽の呟きは誰に聞かれる事もなく、ただ静かに消えていった。
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