04
「咏羽、またグリーンピース残してる!」
「仕方ないじゃん、嫌いなんだもん」
陽日先生の手伝いを終えた後、急いで着替えに寮に戻った。月子が1人で僕を食事に誘ったって事は、錫也と哉太が一緒じゃないって事で。不味いと思って急いで食堂に向かったのに当の本人は弓道部の面々に囲まれて、大変楽しそうにしていた。
「もう!いい加減機嫌直してよ」
「僕は別に機嫌悪くないよ」
「嘘。さっきからずーっと私の方見てくれないもん!」
「気のせいじゃない?」
あんなに走って来たのにこの状況はなんだか釈然としない訳で、僕は無意識のうちに月子を見ないようにしていた。でも、まあ、そろそろ止めないと泣き出しそうだから勘弁してあげようかな。
「シュークリーム1個で許してあげるよ」
「本当に?」
「僕が今までに嘘吐いた事あった?」
「ない!」
月子は勢いよく席を立ち上がると購買に向かって走っていった。たかが僕の機嫌取りなのに、あんなに嬉しそうに走っていくなんて可愛い奴だ。
「おい、神苑」
「何、宮地」
「夜久が男バスの群れに突っ込んでいったが、大丈夫なのか?」
「・・・ちょっと行ってくる」
前言撤回。月子はただの問題児だ。あんな男だらけの場所に普通突っ込んで行きますか?
「あれ〜?夜久さんじゃん」
「なに、1人?なら俺らとお昼食べない?」
「あのっ、私シュークリーム買に来ただけなんです」
「じゃあ俺が買ってあげるから一緒に、」
「そいつから離れろっ!!」
案の定月子は小麦色に焼けた男バス組に絡まれていた。割と喧嘩は得意だし、やったら一樹達が煩いんだけど。でも僕の助けがなくても大丈夫みたいだね。
「か、哉太!」
「お前なにやってんだよ!!」
「ご、ごめんっ」
「うわ、七海だよ。行こうぜ」
「2度と来んなよ!」
お決まりの台詞を吐いた哉太。似たような事が先週もあった様な気がするけど、今は気にしないでおこう。
「月子。何してるのさ、また哉太に助けてもらって・・・」
「咏羽!」
「咏羽の言うとおりだ!俺が来なかったら危なかったんだぞ」
「ごめんなさい…」
「それは大丈夫だよ。哉太来なかったら僕が行くつもりだったし」
「咏羽は何を言ってるのかな?」
その場が凍りついた様に静かになったのは、オカンと呼ばれている月子のもう1人の騎士様せい。最後の僕の台詞、ばっちり聞かれちゃったかな。
「錫也、居たの」
「もちろん。それより咏羽、今の言葉は聞き捨てならないな」
「おい錫也!なんかすげぇ注目浴びてんぞ!?」
「錫也、とりあえず場所変えよう?ね?」
怒られるべきなのは月子の筈なのに、何故か食堂の片隅で僕は錫也のお説教を約30分受け続けた。
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