02




「一年生の皆さんは体育館へ移動してくださーい」



この台詞を何回言っただろう。今年の一年は素直な子が少ないらしく、思いの外移動に時間がかかってしまっていた。



「……苛々してくるな〜…」



元々気が短い方なので今この状況が嫌で嫌で仕方ない。いつまでも廊下で喋っている奴、教室から一歩も動こうとしない奴。いっその事ここから叫んでしまおうか。



「いや、そんな事したら一樹に怒られる。………よし、誉を呼ぼう」



困った時の誉だ。そうと決まれば早速誉の携帯に電話を掛ける。



『もしもし、咏羽?』
「誉?今どこに居る?てゆーか今暇?」
『弓道も今日はお休みだし、暇と言えば暇だよ?』
「じゃあ今から一年の階に来てくれない?苛々し過ぎて暴れそう」
『暴れそうって…今ちょうど下の階に居るから、大人しく待ってて』



流石誉。連絡して一分も経たないうちに誉は僕の元に来てくれた。おかげで怒鳴る事なく一年生を何とか体育館へと誘導する事が出来た。



「咏羽も成長しないね」
「まぁね。気が短いのをどうにかしようとか考えないし」
「僕はそのままでも構わないけど、その内直しておけば良かったとか後悔するよ?」
「後悔したら、その時はその時だよ」



誉はこうして時々僕にお説教じみた事を言ってくる。でも僕にはこの性格を直す気なんて更々無いし、これで友達が居なくなろうものならそれでも構わない。



「さて。一樹達の所に戻らなきゃ」
「今年も一樹、あの強烈スピーチするのかな」
「するんじゃない?颯斗にしつこく止められてたけど、本人はやる気満々だった」
「俺が白と言えばカラスも白!この学園では俺がルールだ!とか、また言っちゃうのか」



誉は笑って言うけど、実際あれは相当恥ずかしい。去年の入学式に一樹が祝辞を述べる際に言い放った言葉は、僕が一樹に恥をかかせようとお遊び半分で一緒に考えたやつだから。



「言ったら言ったで楽しいからいいじゃん。あれ考えたの僕だし」
「え、咏羽が考えたの?」
「うん。一樹に恥かかせてやろうと思って」
「…一樹が聞いたら泣くよ」



そんなこんなで入学式は始まり、一樹は予想通りあの恥ずかしい独裁政治発言をした。






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