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「今日ってなんかあったっけ……あー、入学式か…」
一樹が昨日資料片手にいろいろ指示を出していたとか、颯斗に怒られながら会場設営していたとか、今頃になって思い出した。生徒会が忙しい中、屋上で一人寛いでるなんて一樹達に知れたらきっと怒られるなー。
「ん…着信?」
マナーモードにし忘れたのか、スマホが軽快な音楽を奏で始めた。掛けてきたのは勿論一樹。わざわざ電話に出てまで怒られたくはない為、出るか出ないか悩んでいたら切れてしまった。
「仕方ない。手伝いに行くか」
一樹の説教より颯斗の黒板キーキーの刑の方が恐ろしいので、とりあえず手伝いだけは行っておこう。何かしら手伝っておけば怒りは軽減される筈だ。
「手伝える事、なさそうだな〜」
「あ!咏羽!!」
「…煩いよ、一樹。もう準備終わったの?」
もうすぐで入学式だと言うのに、皆やけにのんびりしてるけど大丈夫なのか?
「昨日のうちにだいたい終わらせてあるからな。それより咏羽」
「なに」
「お前今までどこに居た?」
「僕がどこに居ようと一樹には関係ないよ」
この学園には女子は二人しか存在しない。一人は僕、もう一人は星月学園のマドンナと称されている夜久月子。立地している場所やカリキュラムが専門的すぎる為か、男女共学になった今でも女子は全く入学してこない。それのせいか、一樹も誉も人一倍僕に過保護だ。
「また一人で屋上に居たんじゃないだろーな」
「居ません居ません」
「ったく…お前がいくら中性的な顔立ちだからって、女だって事に変わりないんだからな!」
「はいはい。いざとなったら男装するから心配しないでよ」
「そうゆう問題じゃない!!」
中性的な顔立ちのおかげで中学の時はやたら女子からモテたのを覚えてる。男装したらちゃんとした男に見えるし、化粧したりなんなりしたら次は男子が煩かったな。
「咏羽さん。やっと来たんですか」
「おはよう、颯斗」
「おはようと言う時間ではありませんよ、もう」
「あれ、本当だ」
時刻はもうすぐでお昼。入学式は昼過ぎから始まるらしく、新入生は一度自分のクラスに行く事になっているらしい。そんな中重役出勤してきた僕に、颯斗は面倒臭い仕事を与えてきた。
「一年生の各クラスに、体育館へ来るよう指示してきて下さい」
「え、それって放送かければいいんじゃ、」
「行ってきて下さい」
「…わかったよ」
颯斗の黒い笑みには勝てず、仕方ないので一年の階に足を運ぶ。やっぱり手伝いなんてらしくない事、するんじゃなかったかな。
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