一瞬の輝き | ナノ


どっちも欲しいわ 不知火






「おつかれ、一樹。」
「おう。」

星月学園での最後のハロウィンパーティー。準備だけでなく進行も頑張っていた一樹は、かなりお疲れのようだ。

「お、いいな。そのコスプレ。」
「コスプレとか言わないでよ。一樹に言われたらなんかエロい。」
「でもスカート短すぎだろ。」
「おっさん。」
「……。」

今年の仮装はコウモリ。正直私はシーツを被るだけでも良かったんだけど、最後なんだからって月子ちゃんが用意してくれた。

「一樹はドラキュラ?」
「ああ。別にシーツ被るだけでも良かったんだけどさ。最近ジョ○ョにハマってな。」
「………。」

やっぱり私たち、付き合いだしてから似てきた。その仮装をしている理由はどうであれ、かっこいい。

「ちょっとこっちこい。」

一樹に手招きされて私は一樹に近づく。すると一樹はここに座れと言わんばかりに、会長椅子をポンポンと叩く。つまり、一樹の脚と脚の間。

「名前、」
「んっ。」
「かわいい、マジで。」

耳に吐息がかかってぞくぞくする。こんなときばっかり、低くていい声を使うんだから。

「トリック オア トリート?」
「えっ、あ…ごめんね、誉にお菓子預けてきちゃった…。」
「じゃあ、イタズラするよ?」
「きゃっ、」

そう言って私の首筋にかじりつく一樹。尖った牙が少しだけ痛い。さらに唇で吸われて、またチクリと痛み。そして最後はその痛いところをペロリと舐める。

「顔、真っ赤。」
「う、うるさいなあ!」

かわいいと囁くと私の露出した太ももをなでて、衣装に手をかける一樹。

「ちょ、なにしてんの!?」
「え?」
「え?じゃないよ!」

精一杯抵抗するけど、ガッシリ抱きしめられているしまだ体がぞくぞくしてて力が入らない。

「まだイタズラ終わってないよ?」
「…………。」

また耳元で囁かれるとと、さらに抵抗が弱くなる。私が弱いのわかっててこの声使うんだから。

「そんなに抵抗するならもう一回聞いてあげる。」
「え…。」

そう言って一樹は私を膝に乗せて向かい合う姿勢になる。一樹より少しだけ高い視界。月明かりが部屋に射し込んで、一樹の長いまつげの影が揺れる。

「トリック オア キス?」

ニッと笑った口元からチラリと牙に欲情して、イタズラされたいなんて思ってしまった。

でも、

「どっちも。」

どっちも欲しいわ。






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