一瞬の輝き | ナノ


幸せ 星月





「あっ……ん、あぁ…っ!」
「っ…!」


何週間振りかわからない琥太郎との行為。そんなに頻繁にヤってる訳じゃないけど一ヶ月に何回かはこうしてお互いの愛を確かめ合う。

理事長と保健医を兼任した琥太郎は毎日忙しそうでゆっくり家で過ごした事は余りないから、必然的に私はこの広い家で一人過ごす事になる。だから寂しくて、いつも以上に琥太郎を求めてしまう。


「そ、いえば…琥太郎今日、誕生日だね」
「ああ…そうだったか?この歳になると自分の誕生日なんて忘れる」
「琥太郎が忘れても、ちゃんと私が覚えてるよ」


ふとデジタル時計を見ると日付は琥太郎の誕生日。そして時間は深夜二時。何時間こうしていたんだろうとか考える前に、私は琥太郎の誕生日をお祝いする計画を密かに立てる。


「…名前」
「んー?…んっ、」
「おやすみ」
「…おやすみなさい」


軽い口づけをして琥太郎は深い眠りについた。いつも行為の後は余程激しくない限り琥太郎の方が先に夢の世界に行ってしまう。

朝、琥太郎を仕事に送り出してからケーキ作りにでもチャレンジしてみよう。もう何年も作ってないから手順もあやふやだし、ちゃんと調べてからやらなきゃ。そう頭の中で考えを巡らせているうちに私も夢の世界に旅立っていた。


「じゃあ、行ってらっしゃい」
「行ってきます。ああ、今日は多分直獅達が来るだろうから」
「わかってる。ちゃんと用意しておきますよ」
「悪いな」


琥太郎を見送って早速冷蔵庫の中を物色する。お互い余り甘い物が好きじゃないからお店に売ってるケーキは食べない。市販のケーキがダメならいっそ作ってしまおうとガトーショコラを作る事にした。

幸いパソコンで調べなくても前にコピーしたやつが残っていたから、それを見て作ろう。


「材料揃える前に掃除と洗濯やらなきゃ。あと琥太郎のスーツもクリーニングに出して…」


こう見えて私は結構多忙だったりする。家の事は当然やらなきゃいけないし琥太郎の身の回りの事も殆ど私がやっている。

掃除機をかける傍ら洗濯機に洋服と洗剤を放り込んでスイッチを押す。朝食に使った食器も綺麗に洗って一息つく頃にはお昼を回っていた。


「ん〜…腰が微妙に痛いかも」


昨日(今日)の行為の影響が今現れるとは全く迷惑な事だ。単に立ち仕事ばかりしているせいかもしれないけど少なからずアレのせいでもある。

時間も少なくなってきたのでお気に入りの紅茶を飲んで身支度を整えると、鞄に財布を入れて近くのショッピングセンターに向かう事にした。


「さて、先ずは無塩バターとグラニュー糖を買わなきゃね」


カートにカゴを乗せてお目当ての物を探しに食品売り場に直行する。何度も来てるから何がどこにあるのかは大体わかるのですぐに見つける事ができた。

直獅さんと郁君が来るならお酒は必要だよね。きっと祝い酒だとか言って琥太郎に飲ませようとするだろうし、アルコール度低いやつにしておこう。そんな事を考えてるといつの間にかカゴは一杯になっていた。














「よし。これで完璧!」


テーブルの上にはいつもより少し豪華な夕食。さっき琥太郎から直獅さん達と一緒に帰るってメールがきたから、もうそろそろ着く頃だろう。


「名前ー!!居るかぁ?」
「おい直獅、大声を出すな」
「陽日先生、近所迷惑ですよ」


直獅さんの扱いも相変わらずで思わず笑ってしまう。玄関まで行くとお酒を持参した直獅さんと私にと紅茶を買ってきてくれたらしい郁君、既に疲れ気味の琥太郎が立っていた。

部屋に通すと用意していた料理に直獅さんがまた大声を出して琥太郎と郁君に窘められる。そんなやり取りをしながらも席に着いて三人共綺麗に完食してくれた。


「よーし!祝い酒だ!!」
「直獅、言っておくが俺は飲まないぞ」
「えー?!主役が飲まなくてどーするんだよ!」
「陽日先生は飲みたいだけでしょう?僕が付き合ってあげますから」


持参したお酒を持って琥太郎に絡む直獅さんを郁君が止める。二人にはリビングの方にお酒とおつまみを持っていってもらって、冷蔵庫から数時間前にできたガトーショコラに手作りプレートを乗せて琥太郎の座る席に置いた。


「琥太郎、お誕生日おめでとう!」
「名前が作ったのか?」
「うん。甘いの好きじゃないでしょ?だから甘さ控え目に作ったの」
「ありがとう。嬉しいよ」


そう言って頬にキスを一つ。郁君達がリビングの方に行っててくれてよかった。見られたらまたからかわれちゃうし。


「そこのお二人さん。いちゃいちゃするのは構わないけど、僕達の事忘れないでよ」
「悪い悪い。さて、直獅の相手でもしてやるか」
「お酒飲んじゃダメだからね?」
「わかってる。名前も早く来なさい」
「洗ったら行くよ」


食べ終わった食器を洗って皆で食べようと四人分均等に分けてリビングに行くと、あれだけ念を押したのに琥太郎は寝てしまっていた。きっとまた二人に無理矢理飲まされたんだろう。

直獅さんが一升瓶を片手に騒ぐ中、郁君に琥太郎を寝室に運んでもらった。


「ふふ、幸せそうな顔しちゃって。…HAPPY BIRTHDAY、琥太郎」


眠る琥太郎にキスをして、私は直獅さんと郁君の元へ戻った。












−−−−−−−−−−−−−−−

一日遅れだし無駄に長くなったし序盤とか微裏だし、何か申し訳ございません。

琥太郎さんHAPPY BIRTHDAY!





 top 

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -