夢でまた会おう 青空
0915
時計の針が三本、てっぺんで重なって。颯斗はまた一つ歳をとった。って言っても彼女として颯斗の誕生日を祝うのはまだ二回目なんだけど。
今日は、いつもより颯斗が余裕なかったみたいで。隣の部屋の人にバレるから、あんまり声を出すなっていつも言うのは颯斗なのに。でもこの怠さは嫌いじゃない。腰の痛みも独特の匂いも。裸で寝るのだって夏の余韻がまだ残る今頃なら心地いい。さらに颯斗が頭を撫でてくれるから、今なら目を閉じた瞬間に眠れる。
「颯斗、おめでとう。」 「ふふっ。それ、何回目ですか。」 「何回でも言いたいの。」
大切人が生まれた大切な日。感謝してもしつくせない。言葉にして伝えたいのに言葉にならない。こんな気持ち初めてね。
「颯斗。」 「なんですか?」 「今日は休みだから、起きたらケーキ作ってあげるね。」 「ありがとうございます。」 「あと渡したい物もあるの…。」 「楽しみにしてます。」 「で、日付が変わるまで一緒にいてあげる。」 「名前さんがそうしたいからじゃないですか?」 「………うっ。」
そのまま抑えられなかった欠伸を溢すと、颯斗は私をふわっと抱き締めて布団を深く被った。
「今日は少しだけいじめすぎましたね。すみません。」 「少しだけじゃないよ、かなり。」 「じゃあ、朝起きられませんからもう眠りましょう。」 「うん。」 「名前さん、おやすみなさい。」 「おやすみ颯斗。」
行為中の激しいのとは違う優しいキス。もう駄目。今ので眠さの限界だわ。
磁石みたいに引き付けあう瞼。瞬間に夢の中に落ちていく私。また日付が変わるまで何度でもおめでとうって伝えるから。早く来てね、私のところに。
夢の中で待ってるわ。
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