翻弄され続ける 白銀
大学受験で忙しいこの季節。弓道部も無事に引退して、これで心置きなく試験勉強ができると思った。
桜士郎が来るまでは。
「だから、何で私の部屋に来るの?」 「え〜?そりゃ、名前ちゃんの顔が見たかったからだよ?」 「こんな時期じゃなきゃ嬉しい言葉だったんだけどな」
私と桜士郎は、一樹や誉の後押しもあって付き合う事になった。元々仲は良かったし、私の数少ない親友でもあった桜士郎。
いつもはちゃらんぽらんしてるし若干オカマ口調だけど、真面目な部分もちゃんとあるし何かあったら親身になって話しを聞いてくれる良い奴。だからこそ、私は彼に惹かれた。
「桜士郎は卒業したらどうするの?」 「俺〜?んー…まだ考えてないかな」 「考えてないって、私達もうすぐ卒業だよ?早く進路決めなきゃダメじゃない」 「…考える時間が多過ぎて、逆に考えられなくなっちゃったんだよ」
いつもと比べて全然元気がない桜士郎。一樹と何かあったのか、それともまた天羽くんと一悶着あったのか。
どっちにしろ、こんな桜士郎を放置してまで勉強に取り掛かる程、私は冷めた女じゃない。
「何かあった?」 「ん〜…」 「…仕方ないなぁ」 「!」
机の上に広げていた参考書とノートを閉じると、桜士郎が横たわっているベッドに座り頭を優しく撫でてあげる。
桜士郎はこうして頭を撫でられたりする事に慣れてないから、最初の頃は逃げてばっかりだった。本人曰く、恥ずかしいんだそう。でも嫌いじゃないと言ってくれたから、私はこうして偶に撫でてあげている。
「名前はさ」 「ん?」 「本当に付き合うのが俺で良かった…?」 「………何で今更そんな事、聞くの?」 「だって俺、ダメな奴じゃん。ガキっぽくて変態で、その上昔は不良と連るんでたし…」
何が桜士郎をここまで弱らせたんだろう。普段からは想像もつかない程、今の桜士郎は素直だ。
「私は桜士郎がいい。桜士郎じゃなきゃ嫌だ」 「………」 「桜士郎は、私以外の女の子でもいいの?」 「それはちが…っ!!」
飛び起きた桜士郎の唇に、私はそっとキスをした。まさに不意打ち。
「私は桜士郎が好き。桜士郎も私が好きでしょう?だったら何の問題もないじゃない」 「名前……」 「私はずっと、桜士郎の側に居るよ」
ぎゅっと抱きしめると微かに笑いながら名前ちゃんには敵わないよ≠ニ、強く抱きしめ返してくれた。やっぱり、今日の桜士郎は素直だ。
結局その日、桜士郎はそのまま私の部屋に泊まっていった。次の日になって何故か泊まった事がバレた桜士郎は、一樹と誉にお説教をされていた。
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(で、結局昨日は何があったの?) (昨日?あ〜、愛用してたカメラが壊れちゃってさー) (……もしかして、それだけであんなに元気なかった訳?) (それだけって…俺には重大な事だよ!!) (何でカメラ壊れただけであんなシリアスな話しになるのよ!!)
想えば想うだけ、私は君に
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