Was robbed of daily life. 木ノ瀬
私は今、劇的に変化を遂げた自分の日常≠ノ違和感を感じている。
中学の時嫌になって辞めた弓道。冷めた性格が災いしてクラスで浮いている自分。話しかけられても普段無口だから上手く答えられない自分。
それら全部が、私の生活からどんどん消えていく。
「苗字、部活行くよ」 「………木ノ瀬だけ行きなよ。私は、」 「はいはい。行かないなんて選択肢、無いから」 「ちょっ、ちょっと!」 「木ノ瀬と苗字、またやってるな〜」 「だなー。苗字、最近明るくなったし良い傾向なんじゃん?」
原因は彼。同じ宇宙科で何でもそつなく熟すしてしまう天才少年、もとい木ノ瀬梓。木ノ瀬とどうやって知り合ったとか、何で執拗に構ってくるのかとか、そんなの私にはわからない。
だけど彼は至極楽しそうに毎度私の所にやってくる。その光景はクラスの人達によれば私にとって良い傾向らしいが、そんな事私は微塵も思わない。
「金久保部長、連れて来ました〜」 「ちょっと木ノ瀬!いい加減離しっ」 「こんにちは。木ノ瀬くんに苗字さん、今日もよろしくお願いします」 「よろしくお願いします」 「……………」
弓道場に無理矢理連れてこられて、挙げ句の果てには弓道をやらされる私。ほら、もうここに居る時点でいつもの日常≠カゃない。
木ノ瀬が来ると、本当にろくな事がない。毎日毎日私に構うから、クラスにも段々溶け込めてきてしまっている自分にも少し腹が立つ。
「ねぇ、何でそんなに私に構うの?」 「何でって、いつもあんな暗い顔して僕の隣に居られたら迷惑だから」 「…だったら席替えてもらえばいいじゃない」 「僕はあの席がいいの。まぁ、どの道出席番号的には隣になるんだし、いっそ苗字に変わってもらえばいいやと思って」
笑顔でそう言い放った木ノ瀬。本当に、彼はよくわからない人だ。
けど、その強引さは嫌いではない。そう感じてしまっている時点で、きっと私はこの日常≠ノ慣れてきている。
(奪われた日常)
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(はぁ〜…) (何溜め息なんか吐いてんの?) (今日もアンタが来たからよ!) (そっか。苗字は僕が来たから嬉しいんだ) (は?!) ((今日も仲良しだな〜))
Thanks 確かに恋だった
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