魅惑の君に口づけを 青空
「名前さん…?」 「…ん〜……」
一樹会長が後任に僕を指名してもう一ヶ月。最初は僕に務まる筈はないと拒否してきた。でも会長は俺の後を任せられるのはお前しかいない≠ニ、諦めずに何度も説得しに来たのも今では懐かしく思える。
生徒会室のソファーで気持ち良さそうに寝ている彼女も、周りの期待から逃げ続けた僕を叱って前を向かせてくれた。
「名前さん、起きてください」 「んー……あと5ふ、ん…」 「まったく、仕方のない人ですね」
普段の彼女は気が強くて、こんな無防備な姿は滅多に見られない。星月学園は男子校と差して変わらない場所だから、僕は時々不安になる。
いつも明るくて優しくて、身も心も綺麗な彼女はいろんな人から好意を寄せられる。僕と付き合っている今でさえ、よく告白されている始末。寝ている彼女の長くて綺麗な髪に触れ、僕はそっと囁いた。
「名前さん…貴女だけは、絶対に手放したりはしませんから」 「………はーやと…」 「…っ、起きていたんですか?」 「今起きた…」
目を擦りながら起き上がる名前さん。本当に、彼女には驚かされるばかりだ。
「寝起きに颯斗が見れるなんて、なんか幸せだね」 「貴女はもう少し警戒心を持ってください。こんな所で1人で寝るなんて…」 「颯斗待ってたら眠たくなっちゃったんだもん。それに…」 「それに、なんです?」
ソファーから立ち上がったと思うと、すぐ僕に抱き着いてきた。普段はそんな事はしてこない彼女の行動に、少し驚きを感じつつもそっと抱きしめ返す。
「何かあっても、颯斗が助けてくれるでしょ?」
屈託のない笑顔で彼女はそう言った。僕のお姫様は、無意識に僕を誘惑してくる困った人だ。
そんな彼女を守ろうと、髪を掬い取り静かに誓いのキスをした。
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(ぬいぬい!いつ入るんだ?) (もう少し待つんだ、翼!) (ぬぬぬ〜…名前もそらそらも幸せそうなのだ) (だな!よし、今日は帰るか!)
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