If you disappeared 天羽
「ねぇ、もし私が居なくなったらどうする?」 「…は?」
私が唐突にそう言うから、流石の翼もポカンとしていた。明日は翼の卒業式だから、何とか許可を貰って来た久しぶりの翼の部屋。
なのにかれこれ2時間は私を放置している。でも私の発言に不安を感じたのか発明品を真剣に作っていた翼は、私に抱き着いてきた。
「名前…どっか行っちゃうのか…?」 「…もし行っちゃったらどうする?」 「ヤダ。絶対行かせない…」
抱きしめる力が徐々に強くなっていく。翼の過去を知ってから、私は余程の事がない限り翼の側を離れなかった。梓には流石に一緒に居すぎだなんて言われたけど、私がそうしたかったから。
「翼はさ、将来の夢が夢じゃない?梓と一緒にアメリカに行く事も決まってる」 「うん…」 「もちろん、私は翼の夢を応援してるよ?でもそれの倍くらい、辛い」
アメリカに行ったら1年に数回しか会えなくなる。翼の夢は宇宙工学を学んで宇宙船を作る事。これは高1の時からずっと言っていたから、私も翼が夢を叶えられるよう一緒に行くつもりだった。
「私も…一緒に行けたら、な」 「俺、名前と離れたくない。一緒に居たいのだ…」
去年卒業した私は、翼とアメリカに行く為に向こうの大学に通う予定だった。両親も快諾してくれていたけど、半年前に父が亡くなってそれは叶わなくなってしまった。
母を1人残して行く訳にはいかないと、既に合格済みだった大学に謝って合格を取り消してもらったのは今じゃ懐かしい話し。
「一緒に居てあげられなくてごめんね…」 「…俺、絶対名前の事迎えに来るから。ばあちゃんとも約束してるし!ぬはは!」 「…っ、ちゃんと迎えに来てくれなきゃ、私どっか行っちゃうからね!」
翼のおばあちゃんとの約束は、私はまだ教えてもらってない。何度聞いても教えてあげないの一点張り。
でも翼は、私をちゃんと迎えに来れるようになったら教えてあげると笑顔で言ったから、私はそれを今から楽しみに待つんだ。
(もしも、あなたが居なくなったのならば)
−−−−−−−−−−−
(ところで翼、部屋片付けないの?) (名前が来たら一緒にやろうと思ってたのだ!) (ちょっと!手伝わせる気?!) (ぬはは〜!名前が怒った〜!)
← top →
|