一瞬の輝き | ナノ


異常な依存 粟田






「謙ちゃん」
「はいよ」



午前の授業を終えて、天文科の粟田謙介こと謙ちゃんと友達の梨本くんとお昼を食べに食堂に来た。謙ちゃんと私は幼なじみ兼大親友で、名前を呼んだだけで何が欲しいのかわかっちゃう程仲良し。



「粟田、よくそれだけでわかるな」
「ん?あぁ、そりゃずっと一緒に居たら何が欲しいのとかわかるようになるよ」
「謙ちゃんは親よりも私の事わかるもんね!」
「名前も俺の事親より知ってるじゃん」



梨本くんは心底不思議そうにしている。きっと梨本くんの中の幼なじみ像は、月子達の様な物なんだろうな。でも私と謙ちゃんは違う。お互い言いたい事とか欲しい物とか言わなくてもわかるし、手を繋いで歩いたり休日も一緒に過ごす。

それが私たちの【普通】



「お前ら、なんかお互いに依存してる感じだな」
「「依存?」」
「依存ってか、異様な執着っての?この間だって、苗字が他の男子と楽しそうに話してただけで煩かったし」



異様な執着。あながち間違いではないと思う。だって謙ちゃんが居なくなったら私、生きていけないし。きっと謙ちゃんもそうだと思うから。



「だってアイツ下心見え見えだったんだもん」
「つか、そんだけ毎日一緒に居んのに付き合ってるとかじゃないんだろ?」
「私と謙ちゃんはそうゆうのじゃないよ」
「んー…名前とは幼なじみで親友ってだけで、恋人とか、そーゆーの考えた事ないな」
「………そーかい」



私たちの返しにうんざりしたのか、梨本くんは先に戻ると言って食堂を出て行った。残った私と謙ちゃんは今週のお休みはどこに行くかとか、軽くデートの話しをしてから教室に戻った。



「ねぇ、謙ちゃん」
「…梨本が言った事、気にしてんの?」
「うん」
「俺たちが思う【幼なじみ】と、梨本とか他の奴らが思う【幼なじみ】は違うんだよ」



世間一般的な【幼なじみ】の定義は、私たちには一つも当て嵌まらない。だって毎日一緒に居たり手を繋いだり、この歳になってもする人なんて居ない。きっと、これは【異常】なんだと思う。



「謙ちゃんはさ、彼女作ろうとか考えた事ないの?」
「ないよ。俺、名前以外の女子は好きになれないから」
「私も謙ちゃん以外の男の子は好きになれないなー…」



梨本くんが言った通り、これって完璧な【依存】だ。



「俺は名前が居てくれればそれでいいし」
「うん。私も謙ちゃんが居れば十分幸せ」



周りに何を言われても、どう思われても、私と謙ちゃんの在り方は何も変わらない。だって、私も謙ちゃんもお互い大好きだから。









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