一瞬の輝き | ナノ


今日の放課後告白します 木ノ瀬





今日の放課後、名前に好きですって告白するから、16時に教室で。木ノ瀬梓

そんな手紙が回ってきたのは5時間目の一番眠たいときだった。告白って……梓が私のことを好きっていう………そういうことなのだろうか。いやいや、罰ゲームかなんかだろ!そんなことを考えだすと、残りの授業もあっという間で気づけば約束の16時。

「どんな顔で入ればいいの〜。」

教室には既に梓がいる。私は緊張でなかなか教室に入ることが出来なくて、廊下を行ったり来たり。だって好きな人からあんな手紙もらったら誰でも緊張するでしょ?

やっぱり逃げてしまおうか。そんなとき教室のドアが急に開いて、前髪パッツン男がひょっこり顔を出した。

「名前何してるの?ウロウロしてないで早く入りなよ。」
「ひぃぃいいっ!」

体が勝手に動いた。私の体は今全力で梓を拒否している。しかし、逃げるように走り出そうとした私の腕は梓によってガッシリと捕まってしまった。

「………入って。」

今度は体が動かなくなった。あのいつも澄まし顔の梓が余裕のないような顔をするから。

「…うん。」

私は梓に腕を引かれて教室に入り、俯きながら梓の言葉を待った。長い沈黙が続いた後、梓は小さく咳払いをして、さらに大きく深呼吸をしてついに口を開いた。

「名前。」
「…うん。」
「手紙見た?」
「だから来たんでしょ。」
「ああ。そっか。」
「………。」
「じゃあ…言うね。」

また少しの沈黙。心臓がうるさい。梓に聞こえてないよね?私は梓にバレないようにスカートで手汗を拭った。未だに俯いたままだ。

「………ふぅ。」

さっきよりさらに大きな深呼吸。そして梓は私に一歩近づき、頬に手を添えて顔を上げさせる。

「好きです。僕と付き合って下さい。」

その表情はいつもと同じ余裕顔だった。好きだって言われるのはわかっていたのに、いざ言葉にされると嬉しくて足の震えがとまらない。喉の奥がきゅっとなって少し痛い。泣きそう。

「…本当?罰ゲームじゃない?」
「本当。何でそう思うの?」
「余裕そうだから…。」

そう言うと梓は私の手を握り、目を細めてくすくす笑った。

「だって名前も僕のこと好きでしょ?」

顔に熱が集中していった。そんな私を見て梓がさらに笑うからムカついて前髪を引っ張ってやった。

そして梓はガバッと私を抱き締めて、耳元で小さく口を開いた。

「嘘。すっごい緊張した。」







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