純粋無垢な少年の困惑 星月
BLD注意!
「…………んぅ…っ…」
夕方五時。保健室には野球部の練習する声と、意味深な水音が響いていた。
「…ん……ほし…づ…」
俺は理事長兼、保健医である星月先生にベッドに押し倒されて唇を奪われている訳で。
「………はぁっ…」 「少し虐め過ぎたみたいだな。」 「はぁはぁ…ふざけんなよ!」 「はははっ。でもお前、この間より上手くなってたぞ?」 「はぁ!?そんなことっ…」 「いい加減、俺のこと好きだって認める気になったか?」 「なってねーよ!」
本当はこんなことを重ねていくうちに少し気づいていた。俺に星月先生に対して特別な感情を抱いてる。でも。
「先生は先生で俺は生徒だし…。」 「そうだな。」 「おっ…男同士なんだぞ!?」 「そうだな。」 「そうだなって…先生はそれでもいいのかよ!」 「別に関係ないだろ。」
自分が同性愛者になるなんて有り得ないと思ってた。二ヶ月までは彼女だっていた。正直気持ち悪いとも思っていた。なのに俺がいま、星月先生に対して抱いてるこの感情はなんだ。
「………苗字?」 「先生、なんで俺なの?」 「は?」
認めたくない。認めたくないのに星月先生といると安心してる自分がいて、今みたいなキスだって拒まない自分がいて。
「男が好きって…。それにこの学校だったら一人除いてみんな男じゃん。」 「……………。」 「もしかして、ここに来る男子生徒全員にこんなことしてるの?………そんなの…」
いやだ。
「…………っ。」 「苗字?」 「もうわかんねーよ…。」 「俺だってわからないよ。」 「え。」 「男を好きになるなんてな。だが…認めざるを得なかった。抑えきれないんだ。」 「…………。」 「苗字だけだよ。こんな気持ちになるのは。」
俺は、そう言って夕日を眺めながら髪の毛をかきあげる星月先生から目が離せなくなった。
「他のやつらがどう思ってもいいだろ。俺はいつだって苗字の味方なんだから。」 「………。」 「だから俺が好きだって認めるんだな。いや、認めなさい。」
優しい星月先生の笑顔に何かが締め付けられたような気がした。きっとこれが本当の恋。でも認めたくないから、
「……嫌いじゃない。」
ってことにしておこう。
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