一瞬の輝き | ナノ


放課後の教室は少し寒くて 東月






卒業式。部活にも入っていなくて、特に親しい先輩もいなかった私にとっては正直言ってどうでもいい式だった。けど、来年は私の番だと考えると胸の奥がキュッと締め付けられる感じがした。



「錫也ぁー。」

「なに?」

「錫也は、大学行くんだよね?」

「うん。」



みんな親しい先輩の所へ行ってしまって、私たち以外には誰もいない教室。遠くの方で別れを惜しむ人たちの声がする。



「そっか。」

「名前は?」

「わからない。」

「え、もう3年になるんだよ?」

「わかってるよ。」



わからない、なんて言ってるけど。進学は絶対にないと思う。就職かな。だってもう勉強したくないし。星月学園の生徒だからって星関係の仕事に就かなきゃいけないなんて決まりもないでしょ?



「……どうせ。」

「ん?」

「本当は勉強したくないから就職しようとか考えてるんだろ。」

「なんでわかったの?」

「お前のことなら大体わかるよ。」

「…………そのとおりです。」



でもね、錫也。わかってほしいのはそこじゃない。錫也が大学に進学して他に好きな人ができちゃったらどうしようってすごく不安なの。



「…………。」



涙がすぐそこまでこみ上げてきて私は俯き、唇を噛み締める。なんて言ったらいいのか言葉が見つからない。そんな私を見て錫也は私の手に自分の手を重ねて顔を覗きこむ。



「大丈夫だから。」



いつになく真剣な表情。そして、またいつもの笑顔に戻ると私のおでこに小さくキスをした。

本当に私のことならなんでもわかっちゃうのね、錫也さん?






放課後の教室は少し寒くて、
君の手はこんなにも温かい。






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