触れたところから拡がる 陽日
※切
夕暮れの教室。大好きな陽日先生とふたりきり。夕日のオレンジが陽日先生みたいに温かくて、綺麗で。余計にドキドキする。
「も〜、わかんないよ〜。」
「今回の学年末テストで赤点だったら留年確実だぞ、お前。授業中もいっつも寝てるし。」
「だから今頑張ってるんじゃないですか!もう嫌だよ〜。」
陽日先生のことが好きなのに、陽日先生の授業に限って眠ってしまう。声が心地いいから。今も緊張して内容は全然頭に入ってこないんだけど。
「もう一回説明するぞ。」
ダメダメな私にも陽日先生は一生懸命勉強を教えてくれる。いつも心配してくれる。そんな陽日先生だから恋をした。
「陽日先生、」
「なんだ?」
「今度のテストで100点とったら…」
“私と付き合ってくれますか?”って言ったら陽日先生はどんな顔するだろうか。笑って頷いてくれる?それとも困らせてしまう?
「食堂のパフェ、奢ってくださいね!一番高いヤツ!」
溢れる想いを抑えてわざとらしく笑って見せたら陽日先生も笑って私の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。触れられたところが熱い。
「100点取れたら、な!」
きっと陽日先生は100点じゃなくて赤点免れただけでも、嬉しそうにパフェを奢ってくれるんだろうな。
私は少しでも陽日先生が私のことを見ていてくれるように、再びノートに向かい合い、気づかれないように自然に陽日先生の手に触れる。
『ねえ、陽日先生?私頑張るから、貴方のチカラをほんの少しだけ分けてください。』
私は泣きそうになるのをぐっと堪えて唇を噛み締めた。
触れたところから拡がる
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