一瞬の輝き | ナノ


経験の浅い青春時代 小熊




※0214 2年生 同級生





大好きな人にバレンタインのチョコをあげるのは初めてだ。付き合いだしてから、手を繋ぐことの次の段階に進むことが出来ない私たちだけど、今日は伸也のことが本当に大好きだって伝えられたらいいな。



「伸也、待った?」

「大丈夫だよ。帰ろ?」



放課後、夕方の教室。今日は弓道部の練習がないから久々に一緒に帰る約束をした。伸也はいつものように私の手を優しく握って歩き出そうとする。



「待って、」

「ん?」

「これ、チョコ。」



勇気をだして差し出す手作りチョコ。生まれて初めての本命。緊張して目は合わせられなかった。けど伸也は少しビックリしたあと、安心したように笑った。



「ありがとう。」

「う、ん。」

「良かった…もらえないかと思った。本当にありがとう。」

「味の保証はしないけど…」

「ううん、名前からもらったものなら何でも嬉しいよ。」

「照れるからやめてよ!」



バシッと伸也の腕を叩く。ヒョロヒョロしているように見えて以外としっかりしてる弓道部部長の腕。その腕にガッツリ捕まった私の手首。絶対に顔真っ赤だ、私。



「かわいい、名前。」



伸也は私の腕を引っ張って歩きだし、そのまま教壇に登る。いつもは同じくらいの背丈が今は少し高い。そして切ないような目。



「ねえ…キス、していい?」

「え!?」

「ダメ?」

「だだだだダメくないよ!」

「だったら…目、閉じて?」



言われたとおり目を閉じると、衣擦れの音が聞こえて、少し上から伸也の顔が近づいてくる気配がする。肩に手を添えられれば、心臓は破裂寸前。そして。



「……っ。」



伸也の唇と私のソレがくっついて離れる。一瞬の出来事。本当に一瞬。なのに世界には私たちしかいないんじゃないか、なんて錯覚に陥るほど校内は静かで教室の空気は甘い。



「……帰ろうか。」

「…うん。」



余裕そうに柔らかく笑って、また私の手を取る伸也。なのに耳は真っ赤で、かわいいなんて思ってしまった。



「チョコ、食べながら帰ろう。」

「うん。」

「名前、」

「なに?」

「だいすき。」



私も大好きだよ、なんて。恥ずかしくて言えないから、繋がれた手を強く握り返した。





salad days
経験の浅い青春時代



(ねえ伸也。)
(なに?)
(何で教壇使ったの?)
(かっこつく、から…。)
(なにそれ?)
(僕、背低いし…。)
(………かわいいね!)








ハッピー バレンタイン!




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