一瞬の輝き | ナノ


確かに恋だった 宮地



日曜のショッピングモール。本当なら今日は月子ちゃんと二人で来る予定だったんだけど、急に生徒会での用事が出来たらしく仕方ないから一人で買い物を済ませた。それにしても今日はカップルが多い。なんでも今日はカップルだけ特別割引デーらしい。……リア充爆発しろ!


「私も白鳥とか連れてこれば良かった、損しちゃったな。」


なんて言ってるけど、頭のなかは私が絶賛片思い中の宮地のことでいっぱい。割引を理由に宮地を誘えば良かった。もう悔やんでも仕方ないのだけど。





そんなことを考えながら歩いていると見慣れた後ろ姿。


「うそ、宮地!?」

「む……苗字か。」


そこには今私がもれなく想っていた、宮地が。やばい、運命?私はスキップしたい気持ちを抑えてゆっくりと宮地に近づく。


「なに、買い物?」

「まあ……そんなとこだ。」

「一人で?今日カップル多くて嫌になっちゃうよねー!」

「いや、それは………」

「龍、お待たせ!…あれ?」

「え、」


宮地の後ろから可愛らしい声。その声の主は、おめめぱっちりで私なんかとは正反対のふわふわしたオーラをやんごとなく振りまく女の子。てか、今この子…宮地のこと“りゅう”って呼んだ?


「龍、この子誰?」

「同じクラスの苗字だ。」

「あなたもお買い物?今日男女で来たら安いのに〜。私と龍なんて…」


ああ、そっか。この子宮地の…。さあどうしよう、今なら5秒で泣ける。


「む……苗字?」

「あ…あはは!私KYだったよね、ごめんごめん!じゃあ帰るわ!」

「ちょ、苗字!」





笑った。泣いてるのに笑った。泣いてる自分が可笑しくて。泣いてるのに笑った。一刻も早く逃げ出したかった。宮地に泣いてるとこ見られたくないし……こっちが宮地のこと見てられなかった。あんなかわいい彼女にかなう訳…。


「失恋、ってやつ?」


小さく呟きながらたどり着いたのは唯一私の宮地に対する気持ちを知ってる白鳥の部屋。


「うおっ、どうしたよお前?」

「…………。」

「副部長、か?」

「……うん。」

「まあ……入れよ。」


白鳥はいつもふざけてるだけだと思われがちだが実はかなりいいヤツだ。その証拠に私は、白鳥のおかげでこんなときでも自然に笑えるんだから。人が泣いてるときにチラチラ携帯を気にしてたのは気に食わんが。…あ、お前もリア充か?前言撤回。爆発しろ。


「お前には他にいい男いるよ。」

「うん、そうだね!」

「それに副部長って……」


話し欠けた途端に乱暴にドアをノックする音。白鳥は“やっとか…”と小さく笑って私を玄関へと急かす。


「わり、ダルいから出て。」

「パシりかよ。」


まあ出るんだけど。リア充な白鳥とパシりにされたことに若干イライラ。少し乱暴に鍵を外してドアを開けると、そこには息を切らした……宮地。


「み、宮地!?」

「…白鳥からメールがあって。」

「うん?」

「さっきのは彼女じゃない…」

「え、」

「こっちに遊びに来てた従兄弟だ。だからその……彼女じゃない。」

「そ…そうなんだ。」

「それに俺は他に…………っ!」


もしかして白鳥、宮地に私が勘違いしてるってメールしてたのかな?それはさておき、さっきの子が彼女じゃなくて安心したのも束の間に今度は思い出したように顔を赤くする宮地。


「何言ってるんだ、俺は…」

「え、」

「こんなこと、俺は苗字が好きだって言ってるようなものじゃないか。しかもこんなに焦って…」

「宮地、それって……」

「……そういうことだ!」


林檎になった宮地はそのまま転がるように去って行ってしまった。今の…なに?宮地が私のこと……。



その日の夜、私は屋上庭園で宮地に告白された。








ロマンチックには程遠い


(白鳥サンキュ!)
(リア充爆発しろ!)







thanks 確かに恋だった




← top 

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -