一瞬の輝き | ナノ


さよならはまた今度に 金久保





「優勝、おめでとう。」

「ありがとう。」



最後のインターハイ。星月学園は見事に優勝した。けど、僕にはまだやらなきゃならないことがある。1年生のときからずっと憧れていた南高校の苗字名前さんに想いを伝えることだ。



「まさかあの星月学園が優勝するなんてね〜。女子の個人戦も2年生が優勝してたし。」

「僕も、夜久さんがあそこまで強くなるなんて驚きだよ。」

「そうだね。去年は正直散々だったもの。頑張ったんだね。」



初めて苗字さんに会ったのは1年生のインターハイ。そのときかわいいなって思って、練習試合で何度か会って話をしていくうちに恋に落ちた。



「うん。遅くまで練習していたね。」

「違うよ。金久保くんが。」

「え?」

「金久保くんが頑張って練習したから、その背中を見てみんな頑張ったんじゃないかな。」

「そんなこと…」

「あるの!」

「じゃあ……そういうことにしておくよ。」



苗字さんは目を細くしてコロコロ笑った。そのとき、南高校の子が苗字さんを呼びに来た。タイムリミットはかなり近い。



「そろそろ戻らなきゃ。」

「そ…そうだね。」

「じゃあ、金久保くん。」

「なに?」

「優勝おめでとう。あと、3年間お疲れ様。部長も。……かっこよかったよ、すごく。」

「ありがとう。」

「じゃあね、さよなら。」



苗字さんはフッと笑って僕に背をむける。“かっこよかった”という言葉が頭をぐるぐる回る。僕はまだ想いを伝えていない。ありがちな言葉だけど、このままだと僕は一生後悔するだろう。



「苗字さん!」

「えっと…その……」

「金久保くん?」

「その……メールアドレス、教えてくれない、かな?」



目を丸くしたあとに、少し照れながら笑顔で頷く苗字さん。僕は心の中でガッツポーズをする。



「いいよ。」

「本当に?」

「うん。私も金久保とまたゆっくり話がしたいと思ってた。仲良く……なりたいの。」

「ありがとう。」



結局好きだという想いは伝えられなかった。けど、メールアドレスを交換した。またふたりで会う約束をした。

“さよなら”が“またね”になる。

タイムリミットをどこまで延ばすかは僕次第。けどいまは、メールアドレスを交換したあとに真っ赤になる苗字さんを見て、自惚れてもいいよね?





さよならはまた今度に。





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