そして暫しの戯れを 星月
※主人公は星月学園の教師で琥太郎さんとは恋人同士な設定。
近ごろ、名前の様子が変だ。毎日決まった時間、夜の保健室で二人きりになってもどこか上の空で、ときどき苦痛に耐えるように顔を歪めたりする。さらにダイエットを始めたと、食事制限までし始めた。今だって俺が話しているのに頬に手をあててボーッとしている。
「おい、聞いてるのか?」
「……んぁ、ごめん。」
「なんかあったのか?」
「な、なんもないよ!それよりね、今日授業中に…」
慌てて話題を変える名前。明らかに何か隠している。やましいことでもあるのだろうかと、最近の名前のことを思い返す。苦痛、頬、食事制限。……もしかして。
「お前、虫歯あるだろ。」
「え!?」
名前は驚いたあとに申し訳なさそうな顔をする。やっぱりな。虫歯で悩んでいる彼女に悩まされてた俺って…。
「うん…。しかもね、虫歯だけじゃないの。口内炎もみっつ出来ちゃって…。」
「それは薬塗っとけ。虫歯に関しては、時間が出来たら歯医者に連れてってやるから。」
「嫌だよ、怖いもん!」
「餓鬼か、お前は。虫歯が痛くて授業出来ませんなんて言われたら、理事長の俺が一番困る。だからちゃんと治さなきゃダメだ。」
「……はい。」
諭すように言うと名前は以外と素直に言うことを聞いた。少し悔しそうな顔。拗ねられても困るのだが…。
「うるさいなぁ、琥太にぃは。」
「お前が琥太にぃって呼ぶな!」
「あはははっ!……っ。」
「痛むのか?」
「ううん、唇切れた。」
「は?」
こいつのクチは。余計なことばかり言うし、虫歯があるし、口内炎もあるし、唇は切れるし。
「舐めときゃ治る。」
そう言って名前の唇から溢れる血をペロリと舐めとり、そのままキス。最初は軽く、だんだん深く。
「こ…た………」
トロンとした目で俺の白衣にしがみつく名前。その顔が堪らなく愛しくて、さらに深く口内を犯す。
「こた…ろ。いたい……」
舌先に口内炎の感触。名前は三つだと言ってたけど多分四つある。その口内炎ですら、どこにあるのかわからない虫歯ですら愛しい。
「痛いのなんか忘れて、俺のことしか考えられないようにしてやる。」
ゆっくりと俺に身体を預ける名前をお姫様抱っこでベッドに運ぶ。この時間は生徒どころか他の教師もいないし保健室の鍵も二人になるときに閉めたからここでシても大丈夫だろう。他に誰もいない静かな保健室に、学校に二人の吐息が響くようだ。
「…優しくしてね?」
「あぁ。」
パックリ切れた唇にもう一度キスをして俺は名前のスーツに手をかけた。
そして暫しの戯れを
(クチより腰が痛い!)
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