18:最終列車は時の中

「七海はまだ来ないのか?」
「ごめん宮地くん、まだみたいなんだ」
「あいつ本当によく遅れるよな。しかもこんな大事な日に…」
「わ…っ、わりぃー!!」
「お、来た来た!」



今日は私がフランスに行く日。星月学園の2年生として居られるのは今日が最後。わざわざ私を見送る為に弓道部や生徒会、星月先生方や錫也達まで空港に来てくれた。



「それじゃ、まずは俺達からの餞別な」
「餞別?」
「この間街行った時に見つけたんだよ、な?」
「うん!きっと葵ちゃん気に入ると思う」



ラッピングを丁寧に解いて小さな箱を開けると、中には可愛い硝子細工のストラップが入っていた。



「可愛い。ありがとう!」
「ちなみに、私達とお揃いだよ!」



3人の携帯に付いてるストラップは私が今貰った物と色違い。でも、これ選んだのって…。



「これ選んだの、錫也でしょ」
「え、なんでわかったんだ?」
「哉太はまずないし、つきちゃんはもうちょっとラブリーな物選ぶと思うから」
「ば、バレちゃったね…哉太」
「みたい、だな…」



やっぱりね。この1年で錫也達の事は結構把握できたと思う。だからこそ離れる時はとても寂しくなる。



「じゃあ、次は俺達だな」
「そうですね」
「ぬぬぬ〜!!俺達からの餞別はだな〜…じゃじゃん!思い出炸裂マシー、」
「違うっ!!!」



不知火先輩の盛大なツッコミで翼が倒れる。それを苦笑しながら見つめる颯斗。この光景もしばらくは見納めかと思うと、名残惜しい気もする。



「安心しろ葵。餞別は翼の発明品じゃなくて、こっちな」
「…結構大きいですね」



渡されたのはピンク色の包装紙に包まれた四角い物。颯斗がいるから変な物ではないと思うけど、やっぱり気になるから開けてみる。



「…あ」
「どうだ、気に入ったか?」



満足げな不知火先輩達。包装紙の中身は生徒会メンバーと撮った写真が貼られた色紙だった。皆から一言ずつ添えられているメッセージは、飛行機の中で読もうかな。



「はい!ありがとうございます」
「この写真は白銀先輩が現像して下さったんです」
「おーしろー、行けなくてごめんって言ってたぞ」
「白銀先輩が…。ありがとうって伝えておいて」



でもこの色紙、どうやって持って行こうかな。キャリーに入れる訳にはいかないし…。



「じゃあ次は僕達ですね、先輩」
「そうだね」
「木ノ瀬、ちゃんと持ってきたか?」
「大丈夫ですよ、宮地先輩」



そう言って梓に渡されたのは封筒。



「まぁ、中身は飛行機に乗ってから見てよ」
「え、今じゃダメなの?」
「少々生徒会の物と被ってしまったからな」
「そうなんだ。わかった」
「紫乃さん。向こうでも頑張ってね」
「はい」



生徒会と被ったって事はきっと写真だよね。結構な厚さだったしたくさん入ってるんだろうなー。

さて、最後は−−…



「俺達、だな」
「おお!」
「直獅、ここは空港なんだからあんまりでかい声出すなよ」
「わ、悪い…」
「紫乃」
「はい」



星月先生に然り気無く渡されたのは某有名菓子店の袋。いやね、ロ○ズは好きだよ?でもこれってどこでも買えるんじゃ…。



「俺も直獅も忙しくてな、買いに行く暇がなかったんだ」
「いいですよ、これ好きですから」
「ごめんな〜?」
「あと、郁は来てない」
「…そうですか」



きっと星月先生も直ちゃん先生も、まだ仕事がたくさん残ってる筈なのにこうして私の為に来てくれてる。水嶋先生はこの間誰よりも先にお別れの挨拶しちゃったし、きっとあれだけで十分だったんだ。



「あ、そろそろ行かなきゃ」
「もうそんな時間か」
「龍、来年もまた同じクラスだからよろしくね」
「あぁ」
「弥彦にもよろしく言っておいて」



私は龍にそれだけを言うと、皆に手を振りながら搭乗口へと向かう。悲しくないって言えば嘘になる。でも泣かないって決めたから。

次に会う時は笑顔で、成長した私で胸を張って会えるように。



「行ってきます!」
「「行ってらっしゃい!」」



今度は、“ただいま”を言うから
そうしたら、“おかえり”って迎えてね。









end...
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