17:決意の朝

「留学!!?」
「うん。来月の頭にね」



留学を決めた翌日、昼休みを使っていろんな人に報告をした。金久保先輩とか不知火先輩とか、皆驚いたりしたけど最後は笑顔で“頑張れ”って言ってくれた。



「…期間は?」
「1年間」
「俺らが3年になったら帰ってくるって事か…」
「1年なんてすぐだよ」
「そうだけどよー…」



不満そうな弥彦とは反対に、龍はどこか納得したような表情。クラスの皆も最初は残念がったりしてたけど、最終的には応援してくれてちょっと安心した。



「ずっと元気がなかったのはそれが原因か」
「…やっぱりバレてた?」
「あったり前だろ〜?俺らがわかんない訳ないだろ」
「だよね。付き合い長いもんね」



気づいてたのに何も聞かずに黙っててくれたのは、きっとこの2人なりの気遣いだったんだろうな。



「さて、後は…」
「夜久達か」
「うん…。つきちゃんに、言わなきゃいけないんだよね」



言わなきゃ言わなきゃって思ってたけど、結局後回しにしてしまった。最後って結構言うの辛かったりするんだよね。



「行ってくる」
「あぁ、行ってこい」
「泣いたりすんなよ〜?」
「努力しまーす」



2人の笑顔に後押しされて、私は天文科の教室に。ドアの前で深呼吸。



「つーきちゃん!」
「あ、葵ちゃん」
「ちょっと今いいかな」
「うん」
「錫也も哉太も」
「俺達もか?」



つきちゃんの席に集まる錫也と哉太。きっと、哉太は気づいてる。今から私が何を言うのか。だから、そんな悲しそうな顔してるんだよね?



「私、来月からフランスに留学する事になった」
「………今、なんて…」
「フランスに留学するの、1年間だけ」
「あん時泣きそうになってたのって、」
「そ、これが原因」
「…本当に行っちゃう、の?」



やっぱり、泣きそうな顔をしてる。大好きなつきちゃんにこんな顔させちゃうなんて、私本当にダメな奴だなー…。



「行くよ、自分の為に。それに来年には帰ってくるし…だからそんな顔しないで?」
「月子。葵の言う通り、来年になればまた一緒に過ごせる」
「そーだぞ月子」
「わかってる……葵ちゃんが決めたなら、応援するよ」
「…ありがとう、つきちゃん」



昼休みも終わりに近づいた頃、放送が鳴って私は職員室に呼ばれた。



「じゃあ、私行くね」
「うん」
「またな」
「変な奴に絡まれんなよ」
「はーい!」



ちゃんと言えてよかった。“何で相談してくれなかったの”って言われたらどうしようかと思ったけど、やっぱりつきちゃん達は優しい。

職員室に向かう途中、廊下から見上げる空は青くて、あと少しの期間目一杯この時間を楽しもうと思った。





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