15:時空は幻


「最近元気ないみたいだけど、どうかしたの?」
「え、…私、元気だよ?」



星月学園に来てからまだ一度も梓や翼とお昼を食べてないって話しになったから、今日は3人で食堂に来ていた。

それにしても、今ので何回目かな。“元気ないよ”って言われるの。私、そんなに元気ないように見えるのかな。



「嘘。僕にそんなごまかし通用するとでも思ってるの?」
「……思ってない」
「ぬぬぬー…。葵、ずっと悲しそうな顔してるぞ」
「悲しそうな、顔か…」



そんな顔してるんだ、私。あれから3日経ったけど未だにどうするか決めてない。落ち着いて考えたら悪い話しじゃないし、むしろ自分にとってプラスになる。でも、貴重な高校生活無駄にしてまで行きたくはない。



「何があったとか、無理には聞かないけどさ。そうゆう悩みって、誰かに話したら案外簡単に解決するものなんじゃない?」
「……そんな簡単な問題じゃ、ないんだよ…っ」
「葵?泣きそうな顔してるぞ…?」
「気分悪いから、保健室行ってくる…」



殆ど手付かずの定食をおばちゃんに渡して、逃げるように食堂を出た。もう限界。1人で悩んでたって答えが出ない事くらい、私だってわかってる。

ただ、相談なんて誰にしたらいいのかわからない。龍や弥彦はインターハイが近いから忙しいし、月子だって生徒会がある。やっぱり、あの時哉太に言えば良かったのかな。



「…考えても仕方ないか」
「葵!」
「謙ちゃん?」
「ちょーっと付き合ってくれ!」
「へ?」
「いいからいいから!」



謙ちゃんに連れられて廊下を走る。昼休みだから廊下に人はたくさんいる訳で、走っているから人に打つかっても謝る暇がなかった。

息を切らしながらも着いた先は放送室。中には昼の放送の準備をしている修吾や守生がいて、私と謙ちゃんを見るなり手招きをしてきた。



「なんで、放送室?」
「それはまだ秘密」
「秘密?…変な事だったら怒るからね」
「だいじょーぶ!!」



本当に大丈夫なのかな?疑問に思いつつも、放送室に入って始まるのを待つ。そして放送開始の時間。



「始まった」
「………」



修吾と守生が話し始めて、それを聞いて謙ちゃんが笑う。いつもと変わらない筈の放送なのに、今日は空気が違う気がした。



「今日は放送室にゲストが来ています」
「……え、」
「(紫乃さん、こっち来て)」
「ええ!?」
「(早く!)」



修吾が小声で私を呼ぶ。ゲストって、私何も聞いてないんだけど!何か喋らなきゃいけないの?



「とりあえず、まずは自己紹介ね」
「えっと、…紫乃葵です」
「今日は紫乃さんをゲストに迎えてお送りします」



それから約15分間、修吾と守生の会話に交ざりながら談笑した。こんなに楽しく過ごせたの結構久しぶりかもしれない。



「葵、楽しかったか?」
「うん。こんなに笑ったの久しぶり」
「そっか。なら良かった」
「粟田ー!ちょっと来てくれ!」
「あ、橘が呼んでるから行くな」
「うん、またね」



楽しい時間はあっという間に終わってしまう。今日程そう感じた事ないかもしれないなー…。



「楽しい時間…か」



こうして悩んでる間にも、大事な時間は過ぎていく。だったら早く答えを出した方がいい。

……大丈夫。自分で決めた事だもん。






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