12:月夜に君

珍しく休日なのに何の予定もなかったので久しぶりに街に来た。新しい服を見るついでにいろいろと必要な物もあるから買い揃えようかな?

あ、もちろん私1人でね。女子の買い物って長いしそれに付き合わせるのも悪い。



「さて…まずは雑貨でも買いに行こうかな」



バス停から少し離れた所にあるショッピングモールに行く事にした。あそこならだいたいの物は揃ってるし、何より広いから退屈しなくて済む。



「…?あれ、あず?」



ベンチに座って居る人をよく見ると、ちょっと疲れた表情をした梓だった。隣には何故か大量の荷物。



「あーず!」
「…葵?」
「こんな所で何してるの?それにその荷物」
「母さんの買い物に付き合ってたんだよ。荷物持ちとして」



よく見れば梓が買わないような物ばかりだった。でも、肝心のおばさんが見当たらない。



「おばさんは?」
「父さん迎えに行った。道に迷ったんだってさ」
「…相変わらず仲が良いよね、あずの家は」



小さい頃から梓の家庭は円満だった。おばさんもおじさんも優しくて、私の事も梓と同じくらい可愛がってくれてたし。絵に書いたような幸せな家庭。



「葵は?」
「…え?」
「何しにこんな所まで来たのって聞いてるの」
「あぁ、ちょっと買い物に来たんだよ」
「1人で?」
「買い物なんかに付き合わせるのも悪いじゃん。ただ服見に来ただけだしさ」



その言葉に対して梓が口を開きかけた時、ちょうどおばさん達が戻ってきた。仲良さそうに手まで繋いでる。



「うわ…手繋いでるし。いい大人が止めて欲しいよ」
「いいじゃない。それだけ仲良しなんだから」
「僕は一緒に居て恥ずかしいだけなんだけど」
「じゃあ先に帰ったらいいじゃん」
「………」



梓は私のその言葉を聞いて急に黙り込んだ。そして思いついたようにそのままおばさん達の方に行って、すぐに戻ってきた。



「行こ」
「え?行こって、おばさん達どうするのよ!」
「いーから!ほら、早く」
「いーからって、ちょっ、あず!」



手を掴まれた私は為す術もなく、そのまま引っ張られるようにショッピングモールへと向かった。

おばさんとおじさんに会うの久しぶりの筈なのに、私なんかに付き合ってていいのかな?その前に、これって俗に言う“デート”ってヤツじゃない?



「母さんと父さんの事は気にしなくていいよ。あの人達だって2人きりの方がいいだろうし」
「でも久しぶりに会ったんでしょ?」
「そうでもないよ。街に来れば偶に見かけるし」
「そうなんだ」
「そう。で、最初は何見に行くの?」
「んー…まずは、」



こうして私のちょっとした休日が始まった。





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テーマ「人外ファンタジー」
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