08:涙色 君の空
「どうゆう事か説明してくれるかな?」
金久保先輩のその一言で私の尋問が始まった。あの時は昼休みで放課後に改めて事情を聞くねって、金久保先輩が怖い顔をして言ったのを私は聞き逃したくなった。
「葵、ちゃんと説明しろ」
「葵って本当無謀だよね」
「いや、なんで2人共そんなに怖いの…?」
もちろんこの場には龍もあずも居る。まさか弓道部を休みにしてまで事情聴取されるとは流石に思わなかったけど。
「あのね、僕達は別に怒ってる訳じゃないんだよ。ただ何があったのか教えて欲しいなって」
「金久保先輩……わかりました」
金久保先輩にそう言われちゃ仕方ない。私は一度深呼吸をしてから前に座る3人を見据えて、昼休みの出来事を適当にかい摘まんで説明した。まぁ、説明するって言っても数分程度で終わってしまう程短いんだけどね。
「…って感じです」
「まぁ、事情はわかったが、お前1人で行くくらいなら誰か呼んだ方がいいだろう」
「だって探してる時間なんてなかったんだもん」
「それが無謀なんだってば。本当、昔から変わらないね」
龍もあずもちょっと呆れたようにそう言った。あのまま錫也や哉太を探してたら小熊くん暴力振るわれてたかもしれないし、考えるよりさっさと行動に移した方がいいでしょ。
「小熊くんも私も無事だったんだからいいじゃない…」
「全然良くないよ。葵は柔道やってたからそこら辺の奴よりは強いかもしれないけど、それでも男と女じゃ違うんだよ」
「っ……」
「木ノ瀬くん…」
あずが何を言いたいのかわかったから、私は何も言えなかった。私は女で、この学園に居るのは全員男。例え私が柔道をやっていて強かったとしても男と女じゃ力の差は歴然だから、もし何かあったらきっと抗えない。
「もう少し、警戒心持ちなよね」
「…わかってるよ」
こうも現実を突き付けられると流石の私もへこむ。あずも龍も金久保先輩も、皆私やつきちゃんを守ろうとしてくれる。だけど私は守られるんじゃなくて守る側に居たかった。だから簡単に誰かに頼ろうとも思わない。
「葵」
「…わかった。もう無茶はしない、約束する」
「本当だな?」
「龍に嘘なんかつかないよ」
「なら、いいんだが」
こうして私の事情聴取が終わった。周りの人にこうして心配してもらえるのは嬉しいし良い事なんだろうけど、なんか落ち着かないなー。内心そんな事を思いつつ、私は龍と一緒に寮までの道を歩いた。