甘やかしたいなあ。
そんな事を考えながら、一年生にも劣る忍の知識を携え六年生と同等の齢を重ねた四年生であるその人を見つめる。
笑顔は二年生くらいかな。そう思いつつ見つめ続けると、ふと、母親の様な笑みで見つめ返された。
ううん、甘やかしきれないなあ。



抱きしめた時のふわりと暖かい感触が好きだった。
ふとした時に揺れる髪や袖が他の人よりずっと美しく僕の目に映った。
きらきら輝く空気を纏っていて、僕を明るく照らしてくれた。
猫の様で蝶の様で太陽の様なこの人に僕の染めた着物を着せたいと思うのだから、きっとこれは恋なのだろう。



あの人が人形になる夢を見た。
僕の染めた着物を着て、箪笥の上に美しく愛らしく座っているのだ。
僕は人形の為に毎日着物を替えてやって、毎日化粧を施してやって、毎日髪を梳いてやった。
そして、幾つ日を重ねても僕はあの人のように髪を結えないのだと気づいた時、ぽつりと目を覚ました。



「刺繍も時々するんです。自信作です!ええと、向日葵。髪色にも似ているし、明るくて綺麗なイメージだし、花言葉というのがあるらしくて。……ずっと貴方を見てました。これからも見続けます。」
返された制服の袖元に小さく咲いた鮮やかな黄の花まで、真っ赤に染まってしまうかと思った。



「タカ丸さんってもてもてですよね」「え?そ、そう、かな、え、えへ」
恥ずかしそうにほほを赤らめるタカ丸さんは可愛らしいけど、どうにも気に食わない。
「タカ丸さん」「うん?」
「タカ丸さんは僕のお嫁さんになるんですよね?」「そうなの!?」



「距離が縮まらない気がして」
思い悩んで物憂げな様子の伊助にそんな相談をされたから、「そりゃもう無い距離を縮めることはできない」と言ったら、伊助ははっとしてタカ丸さんに抱きつきにいった。
顔を歪める三郎次の隣で青空を見上げる。平和だなあ。



◆溺愛と無関心。診断より
えんえんえんえん。
好きだと好きでたまらないと絶対に離したくないと、なんだかそんな言葉を繰り返すその子を、何を考えているかもわからない表情で柔らかく抱きしめるその人。
俺は少し遠い位置で二人を眺めながら、「ああ」と頷いて、その場を離れた。
さて今日の定食に、豆腐はでるかな、でないかな。



◆+庄鉢
お互いにねえ、おかしな先輩を持ったよね。変装名人かあ。元髪結いかあ。さぞかし、ひとに物を隠すのが上手いんだろうね。
ああ、うん、そこも愛おしいのは、僕らどっちもおんなじじゃないか。
さてそろそろ会いに行かなきゃ、あの人が隠しこんだ物を僕が見つけに行ってやらなくちゃ。



◆台風!
雨と風の荒々しい音に耳を傾けながら、伊助くんは「怪獣みたいですね」と言った。
こんなにも世界を翻弄する怪獣が、最期はどこかで何もなかったかのように消えてしまうらしい。
「ああ、だから足跡を残すんだねえ」
石のような雨も、吹きすさぶ風も、きっと彼の獣のささやかな抵抗なのだねと笑った。



◆台風そのに!
「また怪獣が来たねえ」
雲は厚く、それから降り注ぐ雨は激しすぎた。以前のタカ丸さんとのやり取りを思い出す。
「嵐の後は、きれいに晴れますよね。」
「怪獣の罪滅ぼしなのかもしれないね」
難儀ないきものだと、僕らは今日も灰色の冷たい世界をやり過ごすのだ。
あたたかい明日に思いを馳せながら。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -