相互屈折


彼が僕たち一年は組にちょっかいを出してくるのはよくあることで、うん、日常茶飯事というものだ。
目を合わせれば嫌味。鉢合わせれば皮肉。こちらから何もせずとも、相手から近づいてきて悪態。
構ってほしいのか僕たちを気に入っているのか、とりあえず僕は、少なからず迷惑に感じている。

「伊助ぇ」

「……はい?」

「掃除!掃除しないか」

「は?」

「俺たちの部屋よごれててさあ」

久作はそれなりに整頓してるんだけど、左近はどっか抜けててわりと散らかすし、俺も人並みに汚すし掃除きらいだからなー。
へらへら笑ってそんなことを言ってきたので、訝しげな表情をつくり、あからさまに低く嫌そうな声を出してみる。

「別に僕も掃除が好きってわけじゃないし、ちょっと得意な程度ですよ」

「んん……一年は組のやつは先輩のお願いも聞けないのか」

挑発してるつもりだろうけれど、残念ながらどんどん僕のやる気が削がれていくだけである。
深くため息をつき、目を伏せ、「忙しいので」と言い切ってやった。
勿論それだけで引き下がる相手ではないと思うので、早めにこの場を去るとしよう。

すると。

「ちょ、伊助」

「……はい」

「……。」

俯いて、うー、と悲しげな表情を浮かべているその人。
こいつはさびしいと死ぬ生き物か何かなのだろうか。うっとうしいなあ、と。

しかし、いやはや、認めたくないが。

「……掃除道具は揃ってるんですか」

「!おう!」

「お礼は委員会の当番3日代わりで」

「!?」

おまえきり丸でもうつったかと、困ったように告げられて。
まあ日頃のことも含め、一週間くらいに増やしてやってもいいのだけど、そこはほら、僕の情けというもの。

「まあいいか、ありがとう」と笑う先輩に、この人は僕がいないとさびしくて死ぬのかなあと空を見上げながらぼんやりと考えていた。




いすろじもすきです・・・すなおじゃない!



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