白色止


「ここはどこだろう」

「まっしろだね」

ゆわゆわとひろがる白の中に、ふたり取り残されている。
さてこれはいつからだったか。原因はなにか。それとも本当はずっとここに居たのか。
その白を掻きだそうとしても、手のひらは虚空を舞うばかりである。

「雲かな」

「雲?」

「うん」

こんなにも白ばかりなのだから、いくら進んでも抜け出せそうにないのだから。
雲と空の境界はあんなにも曖昧なのかと、見上げながら思ったことがある。もしかしたら、境界なんてないのかもしれないと。

「俺らは鳥にでもなったの?」

「誰かのかげおくりになったのかも」

「かげおくり」

でも送った先が雲ならば、そのかげおくりは見えないね。かげも、雲も白いから。
それだと送ったひとがあまりにもかわいそうだ。
そう勘ちゃんが言うので、俺は別の可能性を考えてみることにした。

「じゃあ雨になったのかもしれない」

「雨?」

「うん、雨は雲から降るから。そのうち、地に降りそそぐかもしれない」

「落ちてつぶれてしまうのは哀しいなあ」

ううん、ううん。
それなら星か。ちりか。風か。
いや、むしろ、ここは雲ではないのかも。
でも雲でないのなら、ここは。

「なんにも、ないね」

「うん」

「俺らしか、いないね」

「うん」

白紙の中かなあ。お米の中かなあ。目の中かなあ。
ここは、どこだろう。わかるまで悩みつづけようか。
悩みつづければ、ずっと一緒にいれるし、そうだ、そうだ。

ずっと。

「ここはどこだろう」

「まっしろだね」

ゆわゆわとひろがる白の中に、ふたり取り残されている。
さてこれはいつからだったか。原因はなにか。それとも本当はずっとここに居たのか。
その白を掻きだそうとしても、手のひらは虚空を舞うばかりである。

「雲かな」




しろいろし。本当に目覚めようとしないふたり。
みんなおせっかいだから、誰かが目覚めさせることもないのです。



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