贈り物
「庄左ヱ門、次の休みにもちょっと戻るね」
「ん、うん。」
なにやら機嫌良さげに伊助がいう。
ここ最近、伊助が実家の染め物屋に帰ることが多い。別に自由なことだろうと思いなんとも言わず見送ってきたが、これだけ数を重ねているとやはり気になってしまう。
さりげなくわけを聞いてみると、伊助はにこりと微笑んだ。
「着物を作ってるんだ」
「着物?」
「そう、もうすぐ完成する」
なにか野望でも持っているらしい。どこかぎらぎらとひかる瞳に僕はやれやれと勉強を再開する。
「タカ丸さん?」
本に視線を落としながらぽつりと口にすると、少しの間の後、伊助はもっともっと満ち満ちて笑った。
「うん!」
そんな伊助を見て、ああ、あいつらの部屋が本当に塵ひとつなく綺麗になった時より、更に、見事な笑みだなあ。なんて、ぼんやりと考えるのだけど。
「新しい櫛とか、鋏とかの方が喜ぶとか、ないの?」
「こだわりとかあったら困らせるだけだし、それに着物なら僕を主張できる。」
「自己中心的!」
「失敬だ」
それでもきっとあの人はいつものようにほがらかにわらってみせて、僕に礼を言うんだよ。
そう、伊助はどこか遠くを眺めながら想いを馳せている。
僕の友人は、今日も幸せそうです。着物を完成させて思い人に手渡したあとの、こいつの気味悪いほどの笑顔が、今から楽しみです。
「庄ちゃんは贈り物とか、しないの」
「うん?……考えたことなかった」
そうか贈り物、あの人には着物はもちろん花だって髪飾りだって菓子だって喜んでくれるものなら渡してやりたいなあと、我ながら珍しく悶々とする。
その様子を伊助にはははと笑われたから、お互い様だろうと少々むっとした。
「つまりどちらも夢中なのだ」
「いやまったく。」
やんなっちゃうねえ、こりないけどねえ。からからり
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伊助さんと庄ちゃんでなちゅらるに恋のお話すればいい!
庄鉢を庄→鉢にするか悩みまくった!