恋焦がれ


「でーんしち」

高く結い上げられた髪をくいと引っ張られ、すとんと後ろにひっくり返る。
犯人は僕の想い人その人だった。まるい目で「……はい」とだけ応えてみせる。
僕を呼ぶその声で綾部先輩だとは気づいたものの、こうして見つめ合うとやはり気恥ずかしくて思わず目をそらした。
綾部先輩はいつも通り何を考えているのかもわからないような表情で、僕の頭を膝にのせたまま僕の頬をつむつむとつついている。
なされるがままになっていると彼の人はこくりと小首をかしげた。

「一年い組の子は、みんな意地っ張りで頑固で真面目だよねぇ」

「……。」

憧れて憧れてたまらない人に褒められているとは思えない単語を並べられ、しばし返しに悩む。

「伝七はときどき、とてもおかしな行動をするけれど。他の子たちもなの?」

はたとして頭上の顔を見上げた。
おかしな行動。しているのだろうか。いやたしかにしているのかもしれない。ふと思い出してみると、自覚がないこともない。
なんだか急に本当に本当に恥ずかしくなって、かおがまっかになった。
何か言おうとして言わずに止めたり、触れそうになってばっと離れたり、視線があってさささとそらしたり、かと思えば少しだけ触れようとしたり、そっと背中を、横顔を見つめてみたり、それら全て綾部先輩にだけなのだけど。

でも意地っ張りで頑固で真面目なのと、おかしな行動は、何か共通点があるのかな。
きょとんとしてそう問うてくる綾部先輩に、もう何も言えなかった。
赤い頬を見せぬようにするためと、羞恥心をおさえるために、ただただ両手で顔を覆う。
ああ僕は本当にこの人が好きなんだな!




しかしお前のがよっぽど行動おかしいよと!
伝ちゃんは綾部を尊敬してて恋してる。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -