出口なし


「もうやだよ」

怖いよ。どうして僕がこんなことにならなきゃいけないの。
なんであんなことしなきゃいけないの。怖いよ。痛いよ。つらいよ。
もうこんなのやだよ。もうここに居たくない。
髪結いをしてる時がいちばん幸せだったもの。一番楽しかったもの。
帰りたい、帰りたいよ。

すすり泣くタカ丸さんの背中をさする。
ぼんやりと、月のない夜空を見上げた。

でもここに居ると決めたのでしょう。もう出られないとわかっているのでしょう。
あなたはずっと、ここに居なきゃならないんです。どれだけ怖くても、痛くても、つらくても。
それがこの場所だから。そう告げるとタカ丸さんは僕をきっと睨みつけた。

「どうしてそんなこというの!」

きっと皆僕をわらってるから、きっと皆僕なんかすぐに死んじゃうと思ってるから、
伊助くんだってそうなんでしょ、だからそういうこと言うんでしょ。

ぼたぼたと大粒の涙をこぼし続けながら、タカ丸さんは本当に、今にも死んでしまいそうな顔をした。
もうやだよ、やだ、やだ、かえりたい、とうさん、とうさん。すっかりしゃがれてしまった声でそう呟く。

この人がいくら血にまみれても、この人がいくら汚れてしまっても、
この人がいくら傷だらけになっても、この人がいくら僕を嫌っても、
僕はずっとこの人が好きだから、この人がここから出られなくてよかった。
そう思って、心から安堵した。
だから僕はただ真っ直ぐに、この人に絶望を植えつけるだけだ。




ホームシック壊れかけタカ丸さんと不器用ヤンデレ伊助くん。
誰得!!!!!



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