しにがみ
ぼくこわいんだよ。
曖昧な笑顔と一緒に先輩が言う。
「不運に他人さえ巻き込んでしまえるなら、保健委員会の人間が不運なのは、ものすごく恐ろしいことなんじゃないかと思うんだよ。だって、治療した人全てを、傍に居る人全てを、死に至らしめることだってあるかもしれないじゃないか。僕はそのことを考えてしまって、なんだかすごく怖いんだ。」
作兵衛の妄想が移ったかなあなんて冗談まじりに告げる先輩をまっすぐに見据える。
視線に気づいた先輩が見つめ返してくると、さっと目を逸らした。
「せんぱい、は」
「うん?」
「三反田先輩は、大丈夫ですよ。だってそうだったら、僕はとっくに死んでいるかもしれないから」
「これから死期がくるのかもしれないよ」
ぐ、と拳を握りしめる。
「大丈夫ですよ、だって、」
こんな、お月様みたいに、優しくてほんのりと心地よく照らしてくれる人が、誰かを死なせるわけがない。
なんてことは口には出せず、くうと言葉に詰まった。
そんな僕の様子に先輩はふふ、と笑う。
「左近はいいこだねえ」
あまりにも暖かくて、包み込むような笑みだった。
( ああでもこの人の傍に居ることで死んでしまうならそれは本望なんじゃないか。 )
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やわらかかずさこんがすきです。