◆数さこ
可愛いなあと思う。頼れる時もあるなあと思う。
一緒に他愛もない話をしている時、ただ漠然と「明日は晴れるな」と考えたりもした。
でも雨の日に医務室で「雨だね」「ですね」なんて会話をしていても幸せなのだから、この子が(この人が)居るだけで充分なのだ、なんて、とっくに知っている。



◆雑伏+尊
ふと横に座る童子を見やる。
いつも幼稚な態度で私ときゃいきゃい遊んでいるその子が、まるで昔話の美しい女の妖怪を彷彿とさせるような、そんな表情で組頭を見ていた。
それに気づいた組頭がまた何とも奇妙な雰囲気で見つめ返すものだから、私は「…喧嘩?」だなんて考えてしまうのである。



◆富孫
「一緒に居るときに別のことしてるんだから、お前らってなあ。」
なー、と迷子常習犯の二人が顔を見合わせて苦笑いしている。
「んー、なんかいつも」「普通にこんな感じだし」「ねえ」
無理に合わせる必要はねえよな?なんてこちらも顔を見合わせた。
「まあそんな二人が好きだよ」「うん?」「どうも?」



◆作法
伝「あやべせんぴゃ」綾「かんだ」兵「かんだかんだ!」仙・藤「(かんだ!)」
伝「へいだゆーうっさい!」兵「ひいき!!!」



◆彦勘+いすタカ+庄鉢+伝綾
彦「尾浜先輩をください!」く「大切にしてね」
い「タカ丸さん下さい!」く「幸せになれな」
庄「じゃあ鉢屋先輩下さい」く「雷蔵に言ってくれ」
伝「あやあやあやべせんぱいを」く「専門外」



◆庄彦、ヘタレと根暗。診断より
もう、自信が、なくて。そう不安げに呟く彼を抱きしめることもできない自分をあざ笑ってみせる。
手を握ることも頭を撫でることさえも、僕には。
「しょうがないよ、彦四郎はい組だもの」
だからせめてここで、ひっそりと、ささやかに、君を想う。君を守る。



◆富孫
彼も蛇を連れているよ。
長くて、少しボロくて、けれど立派な彼の戦友は、なかなかに素敵だ。
残念ながらあの子は迷子がお好きみたいで、僕に巻きついてくれることは無いのだけど。
彼が躊躇いがちに手を差し伸べてくれるから、僕はそこに捕まれればいいと思う。
でも一緒に迷子の世話はしてやらない。



◆雑こへ
あのこは時折ちいさくほえる。
どうにも言葉にならない言葉を伝えたい時に吐き出すのだと、僕はつい最近気が付いた。
何を考えているか読めない顔をしてあのこはほえる。
僕にはその声に含まれる本当の意図は解らない。
ただ寝ているあのこを撫でる存在にしか、なる事を許されてはいなかったのだ。



◆富松、誰視点かはご想像におまかせ。
富松作兵衛は勇猛果敢な戦士である。努力し日々精進する生徒である。愛らしく健気で一途な日本男児である。
それは真か。それは真であろう。
それでも彼はたしかに、苦し気な表情を浮かべ己の事を屑と罵るのだ。
そして、僕の事を神様のやうだと仰るのだ。
それは真か。
それは、確かに彼の真なのだ。



◆数さこ
蜆蝶はわらった。藤色のはねでたゆたった。
やさしい言葉はどこから紡いでいるのだろう。
紡ぐ、ということは蜘蛛なのか。雲ということはやはり空を舞うのか。
空を舞うのは星だけだ。そして彼はお月様なのだ。
でも、今日は早寝をしなくっちゃ。
朝一番で会う約束をしたのです。



◆数さこ
寒くて震える先輩が犬の様で哀愁を誘われたので、そっと抱きしめてさしあげたのです。
するとそれはもう嬉しそうにどことなく照れくさそうにはにかんでおられたので、そのまさしく犬のような柔らかい髪を撫でてさしあげたのです。
「あたたかいね」と言われて、「ああ確かに」と、とても納得致しました。



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