その後も色んな昔話が出たが、どれも却下。
何故か私達が考えると、どうもおかしな方向に行くらしい。
いつの間にか生徒会長の風間までもが役にしゃしゃり出てきて困る。
ほんの一部の例を上げておくと。
まずは、竹取物語。
「貴族が総司達で…」
「肝心のかぐや姫は?」
「……………何でだろう。風間になっちゃった」
「なっ、何でだよ!お前の頭どうなってるんだよ!」
「…………」
「………真尋?」
「おい総司!お前がそんなこと言うから、決闘になっちゃったじゃん!!」
「はあ!?総司は別に何も、」
「えーだって風間何かに劇だとしても求婚なんて出来ないよ」
「んなあ!?」
「おいおい、お前ら頭ん中の妄想まで一緒なのかよ…」
「なあオレもうつっこみやめていい?」
次にわらしべ長者。
「物々交換していくのは新八さんでいいんじゃない?」
「いつも金に困ってるしな。ろくに働かない剣術馬鹿ってことで」
「お、お前らなあ…!」
「んで他のみんなが村人とすると…」
「……………」
「新八の手拭いから花の香り…嫌だ」
「…お前は何を考えてるんだ!?」
「何か新八…ひどいやつだな」
「ダメな大人だね」
「〜〜お前等は脳内でも俺を貶すのか!!!」
「それに比べて左之さんは男前だよ」
「…また風間の野郎は千鶴にちょっかいを」
「え、お前らの頭今どうなってんの?」
「結論、新八には良い思いなんてさせない」
「なあ俺泣いていいか?」
「その気持ちよく分かるぜ、新八っつあん」
そして、浦島太郎。
「…外堀から固めたら浦島太郎は風間になったというまさかの」
「はあ!?」
「…待て、ならば乙姫は、」
「「土方さん」」
「ぶっ」
「何でお前らはそこでハモる」
「亀は平助だね」
「おいこら総司!何でオレそんなのばっかなんだ!」
「左之さんはイカ。新八はタコ…でいいか」
「ちょっと待って真尋。そしたら僕や一君はどうなるの」
「タイとかヒラメでいいんじゃね」
「……僕に踊れ、と」
「やっぱり斬り合いになっちゃうな〜」
「オレはもう突っ込まねえぞ…」
「あと新八。…みたらし団子より甘い千鶴との恋なんて私が斬り捨ててやる」
「お前の中の俺は何を言ったああああ!!!」
あとは…鶴の恩返しもあった。
まあ、あれは恩返しというより「お礼参り」かな。
他にも色々あったが、まあどれも似たり寄ったりの結果だ。
ちゃんとオチもつくのに、皆から大反対。
「はぁ、もうどれだけ話しても出来る気がしないよ」
「ほんとほんと。昔話難しい」
「ていうか主に話おかしくしてんのはお前等じゃ…」
「何か言った?平助」
「う、なっ何でもねえよ…」
どうしようかと頭を悩ませる私達。
そこに左之さんがある提案を。
「昔話から離れるか?」
「例えば?」
「シンデレラとか色々あんだろ。他にも」
その言葉になるほどと考えてみるが…。
「えー嫌だよ。女いっぱい出てくる」
「別にいいじゃねえか」
「よくない。私達基本出ない」
「えー僕真尋のドレス姿見たいなあ」
「お前は黙ってろ」
実現不可能じゃないだろうか。
シンデレラは。
「でもよ、真尋と千鶴出なさすぎじゃねえか?」
「確かに!千鶴はまだナレーターとかしてるけど、真尋なんか監督とか効果音とかばっかじゃん!」
口々に文句を言う平助達に、私は溜め息を吐きながら答える。
「あのねえ、剣道部は私と千鶴しか女いないんだよ?いや、学校でもだけど」
「それがどうした」
不思議そうに反応する一君。
そんな彼に私は指を立てて言う。
「分からない?男ばっかのところに私達二人が出ても浮くだけなんだよ」
「そうかなー」
「そうなの。大体姫の格好なんてしてみろ。可愛すぎてヤバいだろ!千鶴が!」
「お前は着ないんだな…」
呆れたような平助の呟きは勿論スルーである。
そこに一君が口を開く。
「ふむ。男ばかりのところに女一人出るのは浮く上に、姫の格好が嫌だと言うんだな?」
「そういうこと」
一君は何かを考え込んでから、妙案だとばかりに言った。
「ならばこうはどうだ?男――所謂、主役の…そうだな。シンデレラでいうなら王子にあたる役を、真尋か千鶴がやるのだ」
「………」
その言葉に、私達は静まり返る。
「え、何言ってんの?一君」
私は動揺を隠し切れなかった。
いやいやほんとに何言っちゃってくれてるの。
「いいんじゃねえか?」
「確かにそれなら真尋の心配事はなくなるな」
「なっ…!」
「千鶴はあれだが、お前なら王子役ははまり役だろ」
「おう!違和感ない」
「待て待て待て!!」
何だかおかしな方向に傾き始めた話を必死で止める。
「いいか?よく考えろ?!百歩譲って私が王子だとしても!めちゃめちゃ似合ってしまうけども!」
「自分で言うなよ…」
まあそうなんだけど、多分私は似合う。
しかしそれなら、恐ろしいことになるじゃないか!
「姫役はどうするんだよ!!」
そんな私の悲痛なまでの声に、再び場は静まる。
「…………」
口を閉ざした皆を見ながら、私はきっぱり言う。
「私千鶴じゃないと王子やらないぞ」
「ちょっと待て真尋。それではお前が王子をやる意味が無くなる」
「そうだけど!だけどそうじゃないと…」
どうして分かってくれないんだ。
少し考えれば分かることなのに!!
「一君と総司と平助の誰かが姫やるんだよ!?」
私の言葉に、皆目を見開いた。
当の本人達は…。
「あ、そっか」
「なっななななんでオレら!?」
「そうだ、何故俺達限定なのだ」
総司以外は見事に動揺していた。
「左之さんと新八は体格的に無理!土方さんが相手なら死んだ方がマシ!ならこの三人しかいないじゃん!!」
私が嫌々と首を振りながら言うと、新八や左之さんが爆笑を始める。
「ぶっ、わっはは!!そいつは面白れぇ!」
「わ、笑い事じゃねえぞ新八っつあん!」
「さっきお前も笑ってただろう、平助っ!」
「あんたらは他人事だと思って…!」
私は更に続ける。
「三人とも何気に似合いそうな感じがして複雑だけど、そんな気持ち悪い劇はしたくないだろ!?」
「ぐっ…何か悪口に聞こえるけど言い返せない…!」
「そうさなあ…まあ俺らは見てて面白いからいいが、三人ともやりたがらねえだろ」
「当たり前だ」
「聞くまでもねえだろ!」
即答した二人に、やっと事の意味が分かったかと息を吐く。
そんな中に、とんでもない爆弾を落とした奴が一人。
「僕やろうかな」
――総司だった。
………え、今何て?
「そ、総司……?」
「うん?僕真尋が王子様ならやってもいいよ」
にこっと、そんな効果音がつきそうな顔で朗らかに笑う総司に、私は開いた口が塞がらない。
「は〜〜〜〜〜!?!?!!」
勿論それは私だけでない。
ここにいる全員が、我が耳を疑っている。
「正気かよ総司!?」
「…何を考えている」
「大したこと考えてないよ」
総司は一君の質問にたーっぷりの間を開けて、今度は意地の悪い顔で、答えた。
「シンデレラって――キスシーン、あるよね?」
誰も、何も言えなかった。
というか……。
「そ、それが狙い?」
そう信じられないと総司を見ると、こいつはしれっとこんなことを言う。
「だって、真尋が嫌だって言うから仕方なしに女装なんてものをしてあげるんだよ?なら――相応のご褒美、くれてもいいよね?」
その言葉に、何も言えなくなった。
馬鹿だとは思ってたけど、こんなに馬鹿だった?総司って?
「総司のやつ、全然嫌って感じしねえんだけど…」
「寧ろ楽しそうですね…」
「真尋の方が本気で嫌がってるだろ、あれ」
後ろのひそひそ話が気になるが、とりあえず今は。
「なんだよご褒美って!子供か!」
「ほら、僕アメがないと頑張れないから」
「なら頑張るな!」
ああ言えばこう言う総司に、私は拳を握る。
さすがに理解出来ない。
「なんでそれだけのことで…!」
「僕にとっては重要なんだけどなあ。それに、」
「それに?」
意味深に言葉を切った総司を、私は眉を寄せながら睨む。
そんな私に総司は淡く微笑みながら続ける。
「この学校の生徒や他の色んな人々に見せつけれるじゃない」
「何を」
そうしていつになく甘い声で、こう宣う。
「真尋は僕のだ、って」
予想だにしていなかった言葉に、不覚にも胸が高鳴って。
「〜〜〜〜〜お前はまたっ!」
堪えきれなくて、握った拳でそのまま総司を殴るしかなかった。
「…んなことしなくても誰も真尋にゃあ手、出せねえよ」
「沖田先輩、頑張ってますもんね…」
「ま、真尋は総司以外興味ねえと思うんだがな」
「知らぬは当人達ばかり、ってやつだな」
「その点、あいつも報われねぇな」
後ろでそんな会話がされてたことなんて、私達が気付く訳もなく。
「私絶対しない!王子なんてしてたまるか!!」
「えーなんでよ。やろうよ、シンデレラ」
「やるか!てかそもそもシンデレラって決まった訳じゃないんだよ!!」
「大丈夫だよ。この系統の話は大体王子様とくっついてハッピーエンドだから」
「ねえそんなにやりたいのお姫様いつからそんな男になったの総司の変態ーー!!」
この一月後、無事に薄桜学園文化祭は盛況の後終わった。
しかし私は、この時のことを誰に聞かれても語ろうとは思わない。
***
学パロで学校生活。
水着の話の続き的なもの・・というお言葉から書きました。
が。
これは短編という長さではないぞ、と。
いやそれよりもO氏はどうした、と。
・・また反省会します。
作中出てくる昔話の話は全て、ドラマCDネタです。
なんであんな面白いんでしょうね、あのシリーズ(笑)
聞いたことがない方、是非一度。
企画参加ありがとうございました!!
←