第十七話「オモチャのピアノ」


このみ先生と別れてその夜は

シュタイン総合病院の近くのホテルに泊まった。

「黒男さん…また一人で動くつもりでしょ?」

「どうして分かるんだい?」

「奥さんだから」

ピノコが寝静まった後

未来はそう言って胸を張った。

そんな得意げな未来を

ブラックジャックはかわいななんて思うのだった。

「お前さんピノコに似てきたな」

ブラックジャックはそう言って笑ってから

未来を抱きしめてキスをした。

「黒男さん…」

先に進みそうなブラックジャックに未来は慌てた。

寝ているとは言え、ピノコがいる。

「これ以上は新しい家ができるまで我慢かい?」

あきらめたようにブラックジャックはもう一度笑った。

その晩、未来とブラックジャックは

同じベッドで眠った。


翌朝、ブラックジャックは未来の予想通り

一人で出かけていった。

「全くピノコのことを放っておいて

ちぇんちぇーったら!」

街を歩きながらピノコは

不満そうだった。

「でも黒男さんはピノコちゃんの事

とても気にかけていると思うよ」

「えー?そうかな」

反対と言わんばかりにピノコは

未来の顔を見てそう言ったが

「あ!」

すぐにショーウインドーに目が止まった。

「これはオモチャのピアノね!」

そこには小さくて赤いピアノのおもちゃが

売られていた。

「ねえ、未来!

これ、トリトンくんへのお見舞いにしない?」

ピノコの提案に未来もうなずいた。


to be continued