第十四話「黒い服を着た天使」


翌朝。

(結局、黒男さんは帰らなかったわね)

さすがに未来もブラックジャックの身を

心配になったが

スージーのお母さんの術後の経過も気になって

今日も病室をピノコと訪ねた。

すると未来達がいる病室まで

スージーのお母さんをクロイツェル博士が

診に来た。

「顔色もとてもいい」

満足そうにクロイツェル博士は言ったが

未来にはその様子に既視感を覚えた。

(あれ?

クロイツェル博士、笑うと黒男さんに似てる。

声も?)

その様子を見ていた未来はそう思ったが

何も言わなかった。

しかしスージーは博士の手の傷を見て言った。

「ああ!やっぱり!

先生はあのブラックコーヒー先生なんでしょ?」

確信をもってスージーはそう言い当てた。

「ブラックコーヒーじゃない!

ブラックジャックちぇんちぇーだよ!」

「なんだって?ブラックジャック?!」

クロイツェル博士と思っていて付き添っていた

数人の医師が驚いた声を出した。

「やっぱり…」

未来は納得したが病室は大騒ぎだ。

「そうさ、私は悪魔だ。

だから金で雇われて

こんな下手な芝居をしていたのさ」

ブラックジャックはひげをとり

ウィッグも捨てて、そう言った。

その顔はやはり未来が愛している

ブラックジャック…間黒男だった。


「偽物め!」

病院内に批判の声が響く中

三人は病院を後にした。

まるで追われて逃げるような形になった。

「なにさ!」

ピノコはまだ不満があるようで

出てきた病院をにらんだ。

「もうこんなの慣れっこだろう?」

「でもやっぱり…」

そう言いながら三人が歩いていると

「ブラックジャック先生!」

スージーが追いかけてきた。

「ごめんね、本当に悪魔なら

ママを助けてくれるわけないのにね。

未来の言う通り

ブラックジャック先生は黒い服を着た

天使だわ」

そう言ってスージーは微笑んだ。

「あ…」

「ありがとう、スージー」

言葉につまったブラックジャックの代わりに

未来がお礼を言った。

「へへ。

未来もピノコちゃんも

元気でね」

スージーは天使のように笑って

三人を見送った。

「黒男さん、嬉しいんでしょ?」

「そんなことはないさ」

「ちぇんちぇーは照れ屋なんだかや」

そう言いながら三人は

ドイツのシュタイン病院へ向かった。


to be continued