第十三話「天使の羽」


昨夜、結局ブラックジャックは

ホテルに戻らなかったが

二人の奥さんはブラックジャックが帰らないのは

慣れっこで気ままに過ごしていた。

朝の面会時間になるとスージー親子を

未来達は訪ねた。

「こんにちは、スージー!」

「あ、砂糖ちゃんにミルクちゃん!」

挨拶をした未来と隣にいるピノコを見て

スージーは笑顔を見せた。

「ピノコはミルクじゃないのよさ」

スージーのあだ名に今日もピノコは怒った。

「もうすぐお母さんの手術よね?」

「うん…一緒にいてもいい?」

スージーは泣きそうな顔を未来に見せた。

たった一人の肉親の手術なのだ。

不安だろうと未来もピノコも思った。

「もちろん!」

「そのために来たんだかや」

未来とピノコはできるだけ笑った。


一時間後。

スージーのお母さんの手術が始まった。

スージー、ピノコ、未来は

手術室の前にあるベンチに

三人並んで座っている。

「天使さん…ママを助けて」

スージーは白い羽根を見ながらそう言った。

「それ、天使の羽根?」

「うん!空から落ちてきたの!」

スージーは嬉しそうに未来に羽根を見せた。

「そう…でもねスージー

黒い服を着た天使もいると思うな」

未来はそう優しく言った。

もちろんそれはブラックジャックのことだった。

「え?」

スージーは驚いた顔を見せた。


スージーのお母さんの手術が終わって

数時間経ってもブラックジャックは

ホテルに戻らなかった。

「手術は終わったけれど

ブラックジャックちぇんちぇー

どこ行ったのよさ?」

ピノコは不満そうに言いながら

ベッドに突っ伏した。

「大丈夫、すぐに帰ってくるわよ」

反対に未来はブラックジャックを信じていた。

その晩ピノコは未来と同じ布団で寝た。

ベッドは三つあったがピノコが頼んだのだ。

「ブラックジャックちぇんちぇー…」

寝言でそう言うピノコが

未来は愛おしかった。


to be continued