第十二話「悪魔じゃない」


「お待たせ、二人とも」

再びロビーで待ったピノコと未来に

ブラックジャックは微笑んだ。

しかしホテルに着くとブラックジャックは

荷造りを始めた。

あわただしいブラックジャックを

未来達は不思議そうに見た。

「黒男さん、なんで?」

「明日になればクロイツェル博士に

会えるんでしょ?」

「博士にはもう会って来たよ」

荷造りしながらブラックジャックは

そう言った。

荷造りの手は休まない。

「そうそう黒男さん

あの女の子のこと覚えてる?」

「女の子?」

しかしブラックジャックは

未来の問いかけに、やっと手を止めた。

「公園で会った女の子。

あの子のお母さん明日クロイツェル博士に

手術してもらうんだって」

「明日…」

ピノコの説明にブラックジャックは驚いた顔を

見せた。

何か思い当たるふしがあるようだった。

「ちょっと出かけてくる」

「え?黒男さん…?」

不思議に思った未来は廊下まで

ブラックジャックを追いかけた。

ピノコは追いかけなかった。

「未来…」

未来の姿を見たブラックジャックは

急に強く未来を抱きしめた。

「黒男さん?」

「もしかしたら私は

本当に悪魔なのかもしれない」

「そんなことないよ」

未来もそう言ってブラックジャックを抱きしめた。

「黒男さんは悪魔なんかじゃない」

ブラックジャックの腕の中で

心を込めて未来はそう言った。

「…ありがとう」

短いキスをしてブラックジャックはホテルを出た。

「未来

なんでちぇんちぇーに行先聞かなかったの?」

「聞いちゃいけない気がしたの」

未来はホテルの窓から

歩いていくブラックジャックを見ていた。


to be continued