第四十六話「恋人たちの時計」


夕食を食べるために三人は再び

セントラルパークへやって来た。

すっかり公園が気に入ったピノコの希望だった。

「ここが恋人たちの時計だよ」

ピノコは嬉しそうに時計台を指差して言った。

「素敵な名前ね」

「そうでしょ、未来!

昼間のおばあさんに教えてもらったんだ」

未来とピノコはそう言ってはしゃいだが

「あ…!」

ブラックジャックは何かに気がついたように

時計台をじっと見た。

目は大きく見開かれ、呆然としている。

さっきせっかく買ったホットドッグを

ブラックジャックは地面に落としてしまう。

「黒男さん、どうしたの?」

未来はそう声をかけたが

「ここだ…ここに本間先生が立っていたんだ!」

ブラックジャックは時計台ばかりを見ている。

ブラックジャックは激しく動揺している。

「あ!これって…」

ピノコは昼間キャサリンが落としたと思われる

トランプを拾った。

「ここに来ると思っていたわ」

そんなブラックジャックに言ったのは

いつもの殺し屋の女だった。

赤いロングヘアが夜風に揺れて

ピストルを構えながら不敵に微笑んでいる。

サングラスから見える瞳は狙いを定めたように

ブラックジャックだけを見ていた。

「あなたは…!」

ブラックジャックの命が危ないと思った未来は

両手を広げて女性に立ちはだかった。

「あら、奥様。

ご立派なこと。

ブラックジャックの先に殺されるか

ブラックジャックを看取ってから死ぬか

どちらがいい?」

「しょんなの

どっちも嫌に決まっているのよさ」

答えたのはピノコだった。

「未来!」

ブラックジャックは未来の両手をひっぱり

彼女から危険を遠ざけた。

そして女にトランプを投げる。

バーン!

そこに女が砲弾をして

「あ…!」

銃はトランプを通過して

ブラックジャックの胸に命中した。

ブラックジャックはその場に倒れ

トランプが散らばった。

「ちぇんちぇー!」

「黒男さん!」

二人の奥さんはブラックジャックに駆け寄って

涙を流した。

「さようなら、ブラックジャック先生」

女は笑いながら去っていった。


to be continued