第四十四話「本間血腫」


バート院長先生とは

すぐに会うことができた。

「ようこそ、ブラックジャック先生!

そして未来さん!」

金髪に青い瞳をしたバート院長は

にこやかに未来達と握手をした。

バート院長は若く

ブラックジャックより年下に見えた。

「あなた達のご高名は

かねがね伺っております」

そう言ったバート院長からは

同じ医師としての

ブラックジャックへの尊敬が感じられた。

「それは悪い噂の間違いではないですか?」

「確かに」

自嘲したブラックジャックに未来は笑った。

「まあ座ってください」

そう言われて未来とブラックジャックは

黒いソファに座り

バート院長が向かい側に座った。

「私がここに来たのは

ドクタージョルジュに会うためです」

「ドクタージョルジュなら

どこにいるか知ってますよ」

「え?」

ブラックジャックにすんなり答えたバート院長に

未来は驚いた。

「ですが教える代わりに

先生と未来さんに

ある患者を診てもらいたいのです。

無論正規の治療費もお支払いします」

「私にできることなら」

「私もです」

きっぱりとブラックジャックと未来は言った。

医師として当然の答えだと

未来は思った。

「患者の状態は?病名は?」

「それが…本間血腫なのです」

ブラックジャックの質問に

バート院長は苦しそうに答えた。

「ほ、本間血腫?!」

ブラックジャックは

その答えに明らかにうろたえた。

(本間血腫…

確か黒男さんの命の恩人である本間先生が見つけた疾患…

でも黒男さん、どうしてそんなに動揺するの?)

未来はそれが気になった。

本間血腫とは心臓に血の塊ができて

血液の供給をストップさせてしまう

恐ろしい病気だった。

「ブラックジャック先生…

どうか私を助けていただきたい」

すがるようにバート院長は言った。

「いや、バート院長

このオペはどんな条件でも

お断りするしかありません」

未来はバート院長とブラックジャックの

やりとりを見守ることしかできなかった。

そしてブラックジャックは

「話は終わりだ」

と言わんばかりに部屋を去ろうとしていた。

「黒男さん、待って…」

未来もあとを追いかけようとした。

「待ってください、ブラックジャック先生。

患者はキャサリン・バート

私のかけがえのない母なのです!」

「え?」

さっきセントラルパークで会ったおばあさんを

未来もブラックジャックも思い出した。

「お気の毒ですが」

しかしブラックジャックはそう言って

部屋を後にした。

未来も仕方がなくそんなブラックジャックを

追いかけて

部屋にはバート院長だけが残された。


to be continued