第四十三話「セントラルパークでの出会い」


三人は飛行機でニューヨークに飛んだ。

道中ブラックジャックは

未来とピノコにシュタイン博士から聞いた話を

話した。

ブラックジャックの命を狙うノワールプロジェクトは

人間の寿命を延ばす研究をした組織。

そしてシュタイン博士が

ノワールプロジェクトで知り合った本間先生に

黒男の手術をすすめたらしい。

空港で組織の女性につけられて

タクシーを途中で降りて

三人はバート病院に向かった。

「わあ!ハートがいっぱい!」

ピノコは看板を見て言った。

看板の多くには確かにハートが多い。

「アイラブニューヨーク…

ニューヨークを愛していますって意味だね」

「ああ。

ハートは元々心臓って意味だったんだが

それがいつの間にかラブ

愛してるって意味になったんだ。

どうしてだろうな?」

歩きながら未来とブラックジャックが説明した。

まるで愛する娘に教えるように。

「ピノコには分かるよ。

恋をすると心臓がドキドキしちゃうからだよ」

いつもとは違いキャップをかぶって

動きやすい服を着たピノコは

自信たっぷりに言った。

ピノコはブラックジャックと未来を

愛しているのだ。

「ふふ、そうだな。

私達もお前さん達を愛して

ドキドキしているぞ?」

「黒男さん…」

「ちぇんちぇーったら…!」

珍しく素直なブラックジャックに

二人の奥さんは照れた。

今もブラックジャックは命を狙われているが

こんな時間が三人は幸せだった。


三人がやって来たのはセントラルパークだった。

はしゃぎすぎたピノコは

車いすを押した看護婦さんにぶつかってしまった。

「あら、大丈夫?お嬢さん…」

その車いすに座っているメガネをかけたおばあさんが

ピノコに優しく声をかけた。

「ちょっとはしゃぎすぎちゃったかしら?」

「ああ、どうもすみません」

尻もちをついたピノコも

ブラックジャックも謝った。

「元気な娘さんですね」

「ええ…まあ…」

ブラックジャックは否定はしなかった。

どう見てもピノコとブラックジャックは

親子にしか見えない。

「失礼ですがバート病院の方ですか?」

「はい」

ふくよかな看護師がニコニコしながら答えた。

「そちらにドクタージョルジュが

いると聞いたのですが…」

「ドクタージョルジュはいませんよ。

病院を辞めて何年経つか…」

ブラックジャックの問いに答えたのは

メガネのおばあさんの方だった。

「え?いないのですか?」

「それは本当ですか、奥さん…」

未来もブラックジャックも驚いた。

また無駄足になってしまうのだろうか?

「このお方はバート病院の院長の

お母さん、キャサリン・バートさん

なのですよ」

「院長なら、ジョルジュが

どこにいるか知っているでしょう。

行って聞いてみたら、どうですか?」

「ご親切にどうも」

ブラックジャックはキャサリンに頭を下げて

「ピノコちゃん!行くよ?」

未来はピノコに声をかけた。

「ピノコもう少しここで遊んでいたい」

ピノコはいつの間にか

大きなゴールデンレトリバーに抱きついていた。

「ダメだ。来るんだ」

「この子は私達が見ていますから

夫婦水入らずでいってらっしゃいな」

キャサリンはブラックジャックと未来に

優しく言った。

「ご親切にどうも…」

「ありがとうございます」

未来も頭を下げてキャサリンにお礼を言った。

ピノコも楽しそうだし

病院の中でピノコは退屈してしまうだろう。

だからキャサリンの優しさに甘えることにしたのだ。

「ねえ、黒男さん。

たまには手をつなごうよ?」

「え?恥ずかしいのだが…」

そう話しながら歩き始めた未来とブラックジャックを

キャサリンは優しく見守った。

「奥様、あのご夫婦にたいそうご親切でしたね」

「ええ。

昔の知り合いとその奥さんに似ていたから。

特にあの男性…本当にそっくり…」

キャサリンは大きな時計を見上げた。

その瞳は昔を懐かしむように

穏やかだった。

「思い出すわね、みお…」

キャサリンは持っていたトランプを

握った。


to be continued