第四十一話「12時間のオペ」


「これで…永い眠りともおさらばです」

夕暮れの中

キリコは眠ったままのヒューにつないだ装置をいじった。

キュイーンと装置の動作音がして

ヒューの姪は辛そうに目を閉じた。

しかし

「キリコ!そこまでだ!」

駆けつけたブラックジャックが

ヒューから装置を取り外した。

ブラックジャックからキリコの話を聞いた史子と

全てを見ていた未来とピノコは

少し離れたところで様子を見ることしかできない。

「お前はいつだって俺の邪魔をするんだな!」

キリコは邪魔をされて怒りをあらわにした。

「この患者は私が手術をする!」

ブラックジャックはキリコに払うお金で

手術をするつもりだった。

「24時間猶予をください。

もし24時間経っても

患者が目を覚まさなかったら

キリコに患者を譲りましょう」

ヒューの姪にきっぱりと

ブラックジャックは言った。

「先生…ありがとうございます」

「やっぱり黒男さんだね」

史子と未来はそんなブラックジャックに

感動した。


長い手術が始まった。

史子、ピノコ、未来は

手術室の前で待機している。

「勘違いしないでね。

ちぇんちぇーはあんたのために

戻ってきたんじゃないんだから」

ピノコは長椅子の史子と未来の間に座った。

「ええ…患者のためでしょう?」

「もちろんなのよさ…多分ね

…ちぇんちぇーの周りは美女ばっかり」

史子を見て悲しそうにピノコはそう言ったから

「ピノコちゃんだって素敵なレディじゃない?」

未来は出来るだけ明るく言った。

「そう?!

ちぇんちぇーに近づいていい美女は

未来だけなのよさ」

未来の言葉が嬉しくて

ピノコはパッと笑顔になった。

「仲がいいのね」

「二人とも黒男さんの奥さんだから」

その様子を見て微笑んだ史子に

未来は胸を張った。


手術は12時間に及んだ。

待つだけでも疲れてしまう時間だ。

長椅子でピノコも史子も未来も

三人で身を寄せ合うように眠っていた。

しかしキリコとヒューの姪は起きたままだ。

「何とも長いオペだったな」

手術室から出たブラックジャックに

そう言ったのはキリコだった。

そのキリコの顔は呆れていた。

「これからぐっすり眠る」

ブラックジャックはそれだけを言うと

仮眠室に向かった。

「未来、約束の時間になったら起こしてくれ」

歩きながらブラックジャックは

未来に頼んだ。

「夕方の六時だ!

そうしたら俺の好きにさせてもらうぜ!」

キリコはブラックジャックの背中に叫んだ。


午後四時。

(黒男さん…よく眠っている)

未来は仮眠室にいるブラックジャックの

様子を見に来た。

ブラックジャックは目を閉じて

ぐっすりと眠っているようだった。

(12時間のオペなんて…相当疲れただろうな…)

未来がそう思った時だった。

「きゃあ!」

ヒューの姪の悲鳴が

ヒューが眠っている病室から聞こえた。

「患者か!?」

ブラックジャックはすぐに起きた。

「そうかも」

「行くぞ、未来!」

二人は病室へ向かった。


to be continued