第三十五話「約束を守る男」


ホテルから出たブラックジャックの

行動はすごかったと未来は思った。

深夜に空港までヒッチハイクをし

飛行機をチャーターし

ヘリでローゼンバーグ病院に到着した。

(夫の出費は妻が管理しないといけないけど

今回は仕方ないか)

ヘリに乗りながら未来はそう心の中で呟いた。

同時に約束を果たしたいブラックジャックを

愛おしく思った。


「ここに七千ユーロあります。

これであなたの病院を譲ってください」

そしてブラックジャックは

蟻谷が運ばれたローゼンバーグ病院の持ち主

ミスターローゼンバーグに

そう言ってスーツケースに入った大金を見せた。

「そ、それって…」

「まさか…」

「日本円で百億だ」

うろたえるピノコと未来に

きっぱりとブラックジャックは言った。

「「アッチョンブリケ」」

ピノコと未来の声が綺麗にそろった。

そして話を聞いた

ミスターローゼンバーグのおかげで

蟻谷の手術は始まった。

ミスターローゼンバーグの意思で

手術が終わるまでは病院はブラックジャックのもの。

つまり自由に手術ができるが

全てが終わったら大金は返されて

病院ももとに戻ることとなった。

「頑張ってね、黒男さん」

「ああ、約束だからな」

手術室に入るブラックジャックに

控えているよう言われた未来は

そう声をかけた。

「また私達は待っているだけなのよさ」

「でも約束を守る黒男さん…素敵だと思うなぁ」

ピノコと未来は手術室のドアを

じっと見ていた。


to be continued