第三十三話「無事でいてくれ」


「やれやれなのよさ…」

警察署の近くのホテルで部屋をかりて

ピノコはベッドに横たわった。

粗末なベッドだったが文句は言わなかった。

数分後、寝息を立ててピノコは眠りについた。

「もう寝てしまったな」

「ピノコちゃん、大活躍だったからね」

ブラックジャックに微笑んだ未来は

先程警察に殴られた痕がある

ブラックジャックの左頬にそっと触れた。

「っ!」

「あ、ごめんなさい!

痛かった?

冷やした方がいいよね?」

未来は慌ててホテルにあるタオルを

水道水で濡らして

ブラックジャックの頬にあてた。

「黒男さん…ごめんなさい」

未来は涙を流して謝った。

今日は目がどうかなったかと思うぐらい

未来は泣いてばかりだ。

目の前で夫が殴られたから無理もない。

「なんで謝るんだ?」

「私は何も出来なかったから。

黒男さんの無実を証明するどころか

嘘の自白をさせてしまって…」

「…」

ブラックジャックは無言で

未来を抱きしめた。

「未来…

お前さんが無事ならそれでいいんだよ」

「そんな!

私だって黒男さんには無事でいてほしいのに…」

そこまで言った未来の唇は

ブラックジャックの唇で動かなくなった。

(黒男さん…)

未来も応えるように唇で

ブラックジャックを求めた。

「さて…

名残惜しいが、ピノコを起こして夕食にしようか」

「そうね」

二人は額を合わせて微笑みあった。


to be continued