第三十二話「握手」


「いい加減に吐きやがれ!」

連れてこられた警察で

ブラックジャックは椅子に縛られ

何度も殴られた。

苦痛でブラックジャックの顔がゆがむ。

「やめて!

黒男さんは無実なの!」

その様子を見て手を縛られた未来は

泣いた。

二人とも冤罪なのに

自白するまでその拷問は続こうとしていた。

ピノコは取調室の外で無実を主張している。

「俺は…やっていない」

疲れた顔のブラックジャックはそう言ったが

「ならこのお嬢さんの体に聞くしかないな」

「え?」

未来を刑事が殴ろうとした。

「いや!」

「よせ!」

未来の悲鳴とブラックジャックの静止の言葉が

重なった。

「…わかった。

俺がやった。

だが未来は関係ないから釈放してくれ」

愛する妻を守るために

ブラックジャックはそう言った。

懇願するようなブラックジャックの顔には

未来への愛情があった。

「そんな…黒男さん…」

「お前さんは無事に日本へ帰れ。

ピノコを頼む」

こんな時なのにブラックジャックの声は優しくて

未来は大粒の涙を流した。

「さあ、来い!」

刑事がブラックジャックを

牢に連れていこうとしたその時

「待ってください!」

それを止めたのはレストランで会った

日本人だった。

慌てて走ってきたのか肩で息をしている。

日本人の男性は蟻谷と名乗り

レストランの女性も一緒にいて

ブラックジャック達の無実は証明された。

「よかった…」

今度は未来は嬉し涙を流した。

蟻谷を連れてきたピノコも笑顔だった。

「本当になんとお礼を言ったらいいか…」

「いいえ!

当然のことをしたまでです」

「しかしこのままでは…」

ブラックジャックはどうしても

蟻谷にお礼をしたかった。

「じゃあこういうのは?

もし怪我とか病気とかしたら

ちぇんちぇーが治してくれるの!」

「そうね!

私達は死刑になるかもしれなかったから

命を救われたのだもの。

絶対あなたの命も助けます」

ピノコの提案に未来も賛成した。

「それがいいですね!」

「わかりました。

約束しましたよ、蟻谷さん」

四人は約束の印に握手をした。


to be continued