第二十九話「芽生えた友情」


手術室の前では白拍子と数人の医師が

ブラックジャックを待っていた。

白拍子は苦い顔をしている。

「私にメスを握らせないと言ったのは

お前さんだな?」

そうブラックジャックに言われた白拍子は

とても悔しそうだと未来は思った。

ブラックジャックは白拍子に

報酬一億の支払いと

この機体の操縦を任せた。

白拍子は渋々それを受け入れた。


ブラックジャックは正確に、でも迅速に

閃光弾の破片を摘出していった。

それも揺れる機体の中で。

誰もがその腕に驚き

尊敬のまなざしを向けた。

いつもブラックジャックのそばにいる未来も

その中の一人だった。

(黒男さん…あなたはやっぱりすごい人だわ)

助手をしながら未来はそう思った。


手術が終わり機長は意識を取り戻したが

まだ操縦できる状態ではなかった。

機長が指示を出して

白拍子がなんとか機体を着陸させることに

成功した。


「やっぱり地上が一番なのよさ」

「本当ね」

地上に降りたピノコと未来は

そう言って喜んだ。

地面があることのありがたさを

痛感していた。

「二人とも、お疲れ様」

そんな二人にブラックジャックは微笑んだ。

二人にしか見せない特別な笑顔だ。

「でも一番活躍したのは黒男さんでしょ?」

「いや、お前さん達も命綱を

持っていてくれたじゃないか。

とても心強かったよ」

「ブラックジャック先生!」

未来達をねぎらうブラックジャックに

声をかけたのは史子だった。

史子は機体から少し離れたところに立っていて

史子のそばには疲れたように座る

白拍子がいる。

お礼を言った史子達にブラックジャックは

イギリスへ向けて出発しようとした。

「私も一緒に!」

「いや、訳があって一緒には行けません。

何かあったらここに…」

そう言ってブラックジャックは

ピノコがチェックをしてから

小さな紙に書いた連絡先を史子に渡した。

「じゃあ私も名刺を…」

「ありがとうございます、未来さん」

そう言って未来と史子は名刺を交換した。

二人とも微笑みあって

史子と未来にはもう友情が芽生えていた。


to be continued