第二十五話「神だって分からない」


「機長も私も…

もう動けそうにありません」

そこで副操縦士の声は途切れた。

白拍子の必死の声かけに応えなかった。

「おそらく閃光弾が爆発したんだろうな。

体の近くで爆発すれば致命傷になる」

ブラックジャックはそう推理した。

どうしても操縦席に入らなければいけないが

こちらからドアのロックは解除できない。

「ちぇんちぇー!

ねえ、ここ!」

しかしピノコが先程史子からもらった

スカイホスピタルの模型を持って

ブラックジャックに声をかけた。

「あのドアから出て

ここから入ればいいのよさ。

あたち天才!」

ピノコは客室の天井にある非常口と

模型の非常口を指差して

そう得意げに話した。

だがそれは飛んでいる飛行機の外に

誰かが出ることになる。

「バカな、所詮子供の言うことだな」

「そんなことはないさ。

さっき高度が下がっただろう?

可能性はある筈だ」

白拍子はバカにしたが

ブラックジャックはやる気だった。

「神だってそんなことはできん!」

「神だって分からないことはあるさ!」

ブラックジャックはコートを脱ぎ捨てて

言い放った。

「その通り!」

ピノコもかぶってしまったコートをどけて

叫んだ。

「黒男さん、まさかあなたがやるつもりなの?」

「ああ、私は悪運が強い方だからね」

心配そうな未来を安心させるように

ブラックジャックは笑った。

でも未来はとても不安だった。


to be continued