記憶喪失

スナフキンが森で焚き木を拾っていた時だった。

「あれ?」

目の前に女の子が倒れていた。

「どうしたの?」

慌ててスナフキンは駆け寄って

声をかけた。

「ん…ここは?」

その女の子はとても綺麗で

スナフキンは息を飲んだ。

「ここはムーミン谷だよ。

僕はスナフキン。

君の名前は?」

「私…なにも思い出せない」

泣きそうな声で女の子は言った。

「もしかして記憶喪失なのかな?

大丈夫。

とりあえずムーミン屋敷に行こう」

できるだけ優しくスナフキンは言った。

「ありがとう、スナフキン」

とても嬉しそうに女の子は微笑んだ。

「うん!

でも名前はないのは困ったな」

「じゃあスナフキンが名付けて」

「え?僕が?」

すっかりスナフキンを信用している女の子は

目を輝かせてスナフキンを見つめた。

「そうだな…じゃあミクなんてどうかな?」

「ミク!

いい名前!ありがとう!」

ミクと名付けられた女の子は

本当に嬉しそうだとスナフキンは思った。

「じゃあ行こうか、ミク」

そう言ってスナフキンとミクは

歩き始めた。

二人は確実に惹かれ合っていたが

これが未来の結婚相手との出会いだとは

さすがに思わなかった。


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