第三十三話「テント」

南の国からムーミン谷までは

歩いて約十日の距離だった。

つまり道中は

テントで夜を過ごさなければならない。

最初の夜。

食事を済ませて

たき火をスナフキンとミクは見ながら

この後の事を意識してしまった。

「そ、そろそろ寝ないと」

スナフキンも恥ずかしそうに

視線を泳がせた。

お城で一緒に寝ようと

ミクに言われたことがあったが

あの時は相思相愛とは知らなかった。

「そうね…」

目を合わせずにそんな会話をした二人だが

スナフキンは少し考えた。

「テントは一つしかないから

ミクだけが寝ていいよ。

僕は毛布だけで外でも大丈夫だから」

「そんな…悪いわ」

「いいんだよ。

君は女の子なんだから」

そう言ったスナフキンは

とても優しい表情だった。

ミクを想っているのがわかる

瞳をしている。

結局ミクだけが

テントで寝ることになったが

「スナフキン…あの…」

恥ずかしそうにするミクに

スナフキンは一瞬だけキスをした。

二人にとって初めてのキスだったし

ミクは生まれて初めてのキスだ。

「正解だったかな?」

「うん!」

二人はそのまま額を合わせて微笑んだ。


to be continued


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