第三十話「脱走」

結局次の日もスナフキンは

ミク姫に会いに行かなかった。

一人ただテントの中で横になり

ミク姫との今までの事を思い出していた。

楽しい思い出ばかりで

笑うミク姫がスナフキンは大好きだった。

でも…

「どんな顔すればいいのか分からない。

それに…もう会わない方がいいのかもしれない」

そうスナフキンはつぶやいて

コーヒーをいれようと起き上がり

テントを出た。

「スナフキン!」

だけどスナフキンは驚くことになる。

スナフキンに駆け寄ってきたのは

変装したミク姫だった。

いつものドレスとは違い動きやすいジーンズに

白い半そでのTシャツ。

顔にはサングラスをかけて

深く麦わら帽子をかぶっている。

「ミク姫?!」

「あなたに会いに来たの」

驚いたスナフキンにきっぱりとミク姫は言った。

「と、とりあえず中へ!」

サングラスや帽子をかぶっていたが

スナフキンは警戒して

ミク姫をテントに案内した。

「どうしてこんな無茶を…」

スナフキンがそう言うと

辺りが騒がしくなった。

「ミク姫を探せ!」

と聞こえてくる。

きっと城の兵士だろう。

「私が書いた置手紙が読まれちゃったのね」

そう言ったミク姫は

スナフキンをじっと見た。

暗闇の中しばらく二人は見つめあう。

「ミク姫?」

「スナフキン…

あなたが私を嫌いなら

城に戻ってあなたのことを忘れます。

でも少しでも想ってくれているなら

私をムーミン谷へ連れて行って」

数秒スナフキンは考えた。

そして

「ふふ…君には敵わないな」

と笑って

ミク姫を抱きしめた。

「スナフキン…」

想いが通じ合ってミク姫は

スナフキンの腕の中で幸せな涙を流した。


to be continued


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